研究課題/領域番号 |
25461070
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
箕浦 慶乃 昭和大学, 医学部, 講師 (20439467)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交感神経 / 抑制作用 |
研究実績の概要 |
平成25-26年度は交感神経節前線維(SPN)のα2受容体を介した抑制作用を調べるために新生児ラット摘出標本でのパッチクランプ法を用いてSPNのNorepinephline(NE)とDexamedetomidine(Dxm) (yohinmineよりα受容体親和性が強い) に対する反応を調べた。以前、我々は、SPNにはsilent neuron とfiring neuron の2種類が存在し、それぞれの電気生理学的な特徴を報告しているが、本研究では交感神経の抑制作用を調べるために、シナプス後電位に注目した。SPNにはcontrol recordingで自発的に興奮性シナプス後電位(EPSP)を優位に呈するSPN(EPSP-SPN)と抑制性シナプス後電位(IPSP)を優位に呈するSPN(IPSP-SPN)の2種類が認められた。NE投与によって、どちらのタイプのSPNも有意に脱分極し、EPSPもIPSPも共に増加した。一方で、SPNのfiring neuronの中にはNAによって有意に活動電位やシナプス後電位が抑制されるものもある一定の割合(20%程度)で認められ、NEに対するSPNの作用は多様性が認められた。我々は、これらのNEに対するSPNの反応の違いは、それぞれのSPNのα受容体のタイプ別の分布や感受性によって異なると推測し、α2受容体への親和性が高いDxmを用いてSPNの反応を調べた。しかし、このNAによる抑制作用はDxmで変化が認められなかった。よって、以前、Nishiらが報告(Nishi S. et al. Organization of the autonomic nervous system 1987)にあるように、SPNの興奮作用はα1受容体、抑制作用はα2受容体を介したものというより、両者は異なる機序による作用である可能性も考えられた。しかし、Nishiらの報告と我々の実験方法は異なるものであり、ひとつのSPNの多様性を考えると、さらに大きな交感神経ネットワークでの実験が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画書にあるように、平成25-26年度においてはSPNそのものの電気生理学的性質、薬剤に対する反応を調べた。心血管系を支配するSPNが電気生理学的に自発的に活動電位を発火するfiring neuronと自発的に発火しないsilent neuronの2種類がるが(Minoura et al. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2009)、それぞれにEPSPを優位に受けるものとIPSPを優位に受けるものの2種類があることがわかった(第78回, 79回日本循環器学会総会で発表済, 2014日本高血圧学会で発表済)。さらに、薬剤に対する反応では、ノルエピネフリン(NE)による反応は上述のように多様性があり、ひとつのSPNにおける電気生理学的性質も異なり、さらに薬剤の反応も異なるため、平成27年度も引き続きSPNにおける実験を続行したため若干計画に比べて実験に時間がかかっており、研究計画書よりやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においても上述のとおり、SPNそのもののNAとDxmに対する反応が多様性に富んでいたため、一定の結論をだすのに時間を要した。今後は交感神経システムとしての解明が必要と思われ、さらに大きな交感神経ネットワークでの実験が必要と考えており、当初の実験計画書による上位中枢と連続性を保ったSPNのNAとDxmに対する反応を調べることで十分なのか、再度検討中である。可能ならば上位中枢だけでなく、心臓などの交感神経末梢の各組織での交感神経活動として最終的に考えるとより充実したものとなると思われより総合的に交感神経の抑制作用について考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度においても上述の通りSPNそのものでのNAやDxmに対する反応に多様性があり、一定の結論を出すのに時間を要してしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後はさらなる大きな交感神経ネットワークでの実験を行うが、そのためのセットアップはすでに用意できている。続けての実験施行のための薬剤など消耗品の購入、またデータ解析と論文にするための費用が必要である。
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