<背景・目的>急性心筋梗塞、不安定狭心症、突然死を含む症候群である急性冠症候群の多くは破綻した冠動脈プラークに血栓が付着し血流が途絶することで発症する。これまでの病理学、血管内画像診断法により破綻しやすいプラーク(不安定プラーク)の特徴が明らかにされてきたが、プラークを破綻させる直接の原因は明らかにされていなかった。最近コレステロールの結晶化がプラークに形態的変化、炎症を生じさせプラークを破綻させる機序が提唱された。この仮説が正しければ急性冠症候群あるいはその既往のある患者の冠動脈プラークにはその既往のない患者に比較し多くのコレステロール結晶が存在するはずである。 <方法>本研究では急性冠症候群の既往のある患者とその既往がない患者の冠動脈を光干渉断層装置で可能な限り3枝すべて観察しコレステロール結晶の存在頻度を比較検討した。 <結果>急性冠症候群の既往のある患者群で既往のない患者群に比較し有意にコレステロール結晶の頻度が高かった。なお両群間で年齢、性別、高血圧・脂質異常症・糖尿病の合併頻度、脂質・糖尿病のコントロール状況などの患者背景に差はなかった。光干渉断層装置で観察されたコレステリン結晶が急性冠症候群発症に寄与している可能性が示唆された。
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