研究課題
基盤研究(C)
私たちはmiRNAが新しい心不全の血液バイオマーカーになる可能性を探索するために本研究を実施している。そのために心不全患者の血液中miRNA発現レベルを測定して、心不全の鑑別診断や重症度、病態に関係する生理学的または生化学的検査所見との関連を検討する研究計画を立案した。研究開始に際して、藤田保健衛生大学倫理委員会に研究計画書を提出して承認を得た。倫理委員会承認後、外来通院中で拡張型心筋症を基に心不全症状を有する11例と健常ボランティア3例から文書による同意を得た後に採血および生理学的検査を行った。拡張型心筋症11例の中で高度な腎機能障害がなく、解析可能な心臓著音波検査画像が得られた6例 (53.5 ± 13.5歳) と健常ボランティア3例 (53.7 ± 6.0歳) の血液についてmiRNA発現をマイクロアレイを用いてゲノムワイドに網羅的プロファイリングした。心エコー検査から計測した心不全群の左室拡張末期径= 69 ± 14mm、左室駆出率= 30 ± 7%、組織ドップラ法にて計測したE/e'= 15.5 ± 10.4であった。また血漿中のノルアドレナリン濃度は健常群と比較して心不全群で有意に (p< 0.05) 上昇し (615 ± 179 vs. 350 ± 116pg/ml )、アルドステロン濃度は有意に低下していた (79.9 ± 31.2 vs. 124.3 ± 8.2 pg/ml)。マイクロアレイを用いた網羅的プロファイリングの結果、健常群と比較して心不全群の血液中でp< 0.05の有意水準で異常発現している44個のmiRNAを同定した。さらに、これら異常発現している44個のmiRNAの中で9個のmiRNAは、p<0.01の有意水準でも異常発現していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ゲノムワイドに心不全で血液中に異常発現しているmiRNAのスクリーニングを計画通りに達成することができた。今後は、これら異常発現しているmiRNAに関して、さらに多くの症例でrt-PCRによる定量的評価を行う予定である。
現在、心不全群として6例の症例、健常群として3名についてmiRNA解析を行い、これらの症例については生理学的検査データ、血液生化学的検査データを含めたデータベースを作成した。今後は、さらに多くの症例から同意を得て、定量的rt-PCRによる血液中miRNAの異常発現を定量評価するとともに、心不全の重症度等とmiRNAの発現量との関連等をデータベースを構築して解析する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)
J Cardiol
巻: 61 ページ: 365-371
10.1016/j.jjcc.2013.01.007