研究課題/領域番号 |
25461077
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
石坂 信和 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20270879)
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研究分担者 |
勝間田 敬弘 大阪医科大学, 医学部, 教授 (60224474)
寺崎 文生 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20236988)
星賀 正明 大阪医科大学, 医学部, 教授 (90309154)
伊藤 隆英 大阪医科大学, 医学部, 講師 (00319550)
森田 英晃 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80445981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 / 心機能障害 / 心臓拡張能 / 心臓リモデリング |
研究実績の概要 |
昨年に引き続き、本研究では、血清IgG4値と冠動脈疾患および心疾患との関連について解析することを、目標に掲げている。ヒトにおける血清IgG4と心機能の関連については、IgG4値が高値であるほど、拡張機能が良好であること (Sakane K. Geriatr Gerontol Int, 2014 in press)。また、IgG4の値が高いほど大動脈壁が肥厚していることについて論文公表した(Sakamoto A. J Cardiol. 2015 Feb;65(2):150-6)。これらのことは、明らかなIgG4関連疾患を有さない症例においても、血清IgG4値と心血管リモデリングの間に関連があることを示唆している。2014年には、海外の施設から、IgG4関連の冠動脈疾患によって、突然死や心筋虚血が生じた可能性のある症例が数件報告された。一方、報告されたケースの中には、血清IgG4値の値が不明であったり、組織中へのIgG4陽性細胞の浸潤パターンや割合がIgG4関連疾患には特異的ではないケースも見受けられ、これらの点について、communicationとして論文上でのディスカッションを行った。 他方、日常臨床で遭遇する、さまざまな心血管疾患において、どの程度、血清IgG4値の上昇や、組織中のIgG4陽性細胞の浸潤が認められるかについて、現在まで、充分な報告はない。そのため、循環器入院症例のIgG4値の測定や、手術症例から得られた組織サンプルの免疫組織学的染色により、この点について継続的に検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心血管疾患とIgG4関連疾患の関連について、3つの方向からアプローチを試みている。 (1) 血清IgG4値と循環器疾患の関連 心筋症など特定の疾患においてIgG4値が高値/低値である可能性について、患者からの同意書取得のもとデータベースを構築し、解析を継続している。登録の症例数は増加しており、性別、年齢、心機能などを交絡因子とした解析を現在行っている。 (2) 循環器疾患における組織中のIgG4陽性細胞浸潤についての検討 大阪医科大学の胸部外科における手術により得られた組織サンプルを使用してIgG4陽性細胞浸潤の程度を解析することを目的とした。本研究は、「心血管・腎疾患症例の組織におけるIgG4陽性形質細胞浸潤についての免疫組織学的検討」というタイトルのもと、平成27年3月に当院倫理委員会にて承認され、実際に、心臓、心膜、大血管、弁膜などのサンプルに対して、IgG4陽性細胞浸潤の程度の検討を開始している。現時点の染色数は約10件であるが、臨床情報などとあわせて、100件程度の染色を行う予定である。 (3)IgG4関連動脈周囲炎・動脈外膜炎の診断基準の策定 現在、IgG4関連の心血管疾患についての、臓器特異的な診断基準は存在しない。そのため、包括基準での診断となり、確定診断のためには、組織所見が重要となる。心血管組織の取得にはリスクを伴うため、血清による診断のみで治療に入るケースも見受けられる。しかし、拡大解釈に基づく診断を防ぐためにも、しっかりした、診断基準が必要であると考えている。この点については、他分野のIgG4関連疾患のエキスパートの意見も重要であることから、厚生労働省の難治性疾患等政策研究事業である「IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針の確立を目指した研究」にメンバーとして参加させていただき、診断基準の策定に向けての作業を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、今年度までの方針をさらに拡充する方向で研究をすすめていく。すなわち、血清IgG4値と循環器疾患の関連に関しては、現在投稿中のものも含めて、論文公表、および、学会発表などを通じた公表につなげられるようにしていく。 循環器疾患における組織中のIgG4陽性細胞浸潤についての検討については、手術により得られた組織サンプルの免疫染色を行い、虚血性心疾患、大動脈瘤、弁膜症などさまざまな心血管疾患における、組織へのIgG4陽性細胞浸潤の程度を解析する。IgG4陽性細胞の浸潤が、どの程度、IgG4関連疾患に特異的な現象であるのか、について明らかにすることは、今後、IgG4関連の動脈疾患、あるいは心疾患の診断基準の策定に向けた作業においても参考となるデータである。今後、IgG4関連疾患全体に対する国民の認識が向上することが予想される。そのため、IgG4関連の他臓器の疾患(自己免疫性膵炎や、涙腺・唾液腺炎)などを有する症例において、どの程度、心血管病が合併してくるのか、また、そのなかで、どの程度が、IgG4関連の心血管疾患であると考えられるのか、についての解析が必要となると考えられる。そのため、循環器・心血管以外の他分野をsubspecialtyとする研究者とも連携をしながら、解析に当たりたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
IgG4プレパラート染色、検体のIgG4測定に使用予定であったが、サンプル収集がやや遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、IgG4値の追加測定および論文作成のための費用に充当する予定である。
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