研究課題
目的:一過性意識消失患者には、失神とてんかん発作が含まれるが、臨床症状の類似性からその臨床的鑑別には困難を伴う。本年度研究では、鑑別診断を容易にする診断ツールの作成のための臨床指標の抽出が目的であった。対象と方法:平成25年~26年にかけて、産業医科大学病院で診断および治療、外来フォローされている患者の内、てんかん患者320名(平均 31+/―12歳)と性・年齢をマッチさせた健常者150名の心電図所見を比較し、てんかん患者では治療経過データを収集した。てんかん患者の確定診断は、主に脳波検査による診断であった。てんかん患者の内、側頭葉てんかんと診断された患者の意識消失時のけいれん発作の頻度、心電図所見(J波の有無、QT dispersion)を健常対照群と比較検討した。また、失神患者125名の内、失神時の心電図所見が得られている植込み型心電計(ILR)患者63名の臨床症状と発作時の心電図所見も併せて解析した。結果:1)てんかん患者では健常者に比し、心電図上有意にJ波の発生頻度が高く(26% vs. 13%, P<0.001)、特に下壁誘導で有意であったが(19% vs. 8%, P<0.001)、側壁誘導では有意差を認めなかった。てんかん患者のQT dispersionは対照群に比し有意に大きかった(P<0.001)。ILRを植込んだ意識消失患者において、意識消失時のけいれん発作の発生頻度は、心原性失神と反射性失神、てんかん患者の3群間で有意差を認めなかった。結論:意識消失時のけいれん発作の有無は、失神とてんかん発作の鑑別診断の指標とはならないことが判明した。また、てんかん患者では、健常者に比し有意に心電図異常(J波の出現やQT dispersionの増大)を認めることも明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究で最も重要な点は、てんかん患者の詳細な資料を以下に収集できるかであったが、平成25年度と26年度でてんかん患者320名の資料が収集できた。また、てんかん患者の心電図異常所見を明らかに出来たことは予想以上の成果であった。また、失神患者でもけいれん発作を有することが少なくなく、けいれん発作はてんかんと失神発作の鑑別の指標にはならないことも判明した。最終的に診断ツールを作成する上で、非常に大きな知見が得られていると考えている。
てんかん発作の場合に、出現する症状はてんかんの発生場所により大きく異なることが判明した。また失神でも心原性失神や血管迷走神経性失神でけいれん発作を認めることで鑑別のための指標とはならないことも判明した。前兆の有無、意識消失時間、自動症の有無等個々の症状で鑑別診断に有用な指標を検索する。また、てんかん患者での心電図異常所見は、今回の調査で始めて明らかになった。心電図異常とてんかんの関係を今後追求することでてんかん患者の突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy: SUDEP)の原因解明になる可能性もあり、詳細に検討していく。
予定されていたインド(ニューデリー)での国際学会(第7回アジア太平洋不整脈学会)に急遽出席不可能となり、使用予定であった旅費・宿泊費等をキャンセルし次年度に繰り越したため。
本年度11月に開催予定の第8回アジア太平洋不整脈学会(オーストラリア・メルボルーン)での研究発表のための渡航費・滞在費等に充てる予定。
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