研究課題/領域番号 |
25461082
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
徳留 健 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00443474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グレリン / 心臓リモデリング / 副交感神経 / 炎症性サイトカイン / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
グレリンは成長ホルモン分泌刺激作用を持つ内因性ホルモンである。グレリンは主として胃内分泌細胞で産生され、摂食亢進や体重増加、消化管機能調節などエネルギー代謝調節に重要な作用を有する。一方これまでの我々の研究により、グレリンが自律神経活性調節を介した心保護作用を有することが明らかとなった。平成25年度はグレリンの自律神経調節作用が心臓局所における慢性炎症に与える影響に注目し、実験を行った。モデルとして横行大動脈結紮による圧負荷心肥大モデル(TACモデル)を使用した。野生型マウス(WT)およびグレリン欠損マウス(グレリンKO)にTACを作製し、2日後・2週間後・12週間後、血漿中における炎症性サイトカインを測定したところ、いずれの時点においても、IL-6・IL-1βの濃度はグレリンKOでWTよりも有意に高値であった。心臓重量やエコーで評価した左心室壁厚は、いずれもWTに比較しグレリンKOで増加していた。さらに心電図テレメトリーによる自律神経機能解析を行ったところ、TAC作製2日後・2週間後・12週間後のいずれの時点においても、グレリンKOではWTに比較し副交感神経活性の有意な低下が認められた。なお、交感神経活性には両群間で差を認めなかった。次に、グレリンKOにアセチルコリン受容体アゴニストであるニコチンを飲水投与して副交感神経を活性化したところ、TAC作製による心肥大および血漿中IL-6・IL-1βの濃度は、いずれも有意に改善・低下した。以上の結果は、グレリンが副交感神経活性を調節することで心臓局所の炎症を改善し、心臓リモデリングを抑制することを示唆するものである。本実験結果をまとめた論文はアメリカ心臓協会の学会誌であるHypertension誌に投稿し、掲載されることが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は2014年度の検討で、グレリンの心保護作用における受容体(GHS-R)の重要性を明らかにし、神経特異的GHS-R欠損マウスを作製した。神経特異的GHS-R欠損マウスは対照マウスに比較し体重が軽いことを見出していたが、2015年度はさらに詳細な表現型解析を行った。結果、tail-cuff法により測定した血圧は両群間に差を認めなかった。代謝機能や摂食量・飲水量・運動量に関しては、神経特異的GHS-R欠損マウスでは対照マウスに比較し酸素消費量・二酸化炭素排泄量・エネルギー産生量・呼吸商が有意に低下していたが、摂食量・飲水量・運動量には差を認めなかった。血液データでは、神経特異的GHS-R欠損マウスでは対照マウスに比較し中性脂肪が高値を示したほか、レプチン濃度が高値であった。アディポネクチン濃度には差を認めなかった。Sacrificeして臓器重量を測定したところ、体重補正した心臓重量・腎臓重量は、神経特異的GHS-R欠損マウスで有意に小であった。さらに我々は「研究実績の概要」に記載したように、グレリンが副交感神経活性を調節することで心臓局所の炎症を改善し、心臓リモデリングを抑制することを示した。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
神経特異的GHS-R欠損マウスの基本的な表現型解析は終えた為、今後は本マウスに心筋梗塞モデルを作製し、対照マウスと生存率・慢性期心機能等を比較検討することで、グレリンの心保護作用における神経GHS-Rの重要性を明らかにしたいと考えている。すでに我々はpreliminaryな検討を開始しており、神経特異的GHS-R欠損マウスの冠動脈結紮による心筋梗塞モデル作製後の生存率は、対照マウスよりも低い傾向にあるというデータを得た。今後n数を増やして統計学的有意差が付くかどうかさらに検討するとともに、心臓局所の炎症・心臓リモデリングの程度も評価したい。一方で我々は骨髄細胞特異的GHS-R欠損マウスの作製を終えた。現在繁殖中であり、今後一定の個体数が得られ次第、基本的な表現型の解析を行うとともに、炎症細胞におけるGHS-Rの意義を調べる為、心筋梗塞モデルを作製して対照マウスと生存率・慢性期心機能等を比較検討したいと考えている。
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