研究課題
グレリンは成長ホルモン分泌刺激作用を持つ内因性ペプチドホルモンであり、主として胃内分泌細胞で産生される。その後グレリンが自律神経調節作用を有することが明らかとなったことから、我々は循環器疾患モデル動物におけるグレリン投与の治療的効果を検討した。結果、冠動脈結紮直後にグレリンを単回投与することで致死性不整脈が減少し、急性期死亡が抑制されることなどを報告した。しかしグレリンの循環器疾患に対する治療的効果の詳細なメカニズムは不明であり、本研究課題を立案した。2014年度は、グレリンが心筋梗塞に対する治療的効果を発揮する上で、その受容体であるGHS-Rに結合することが重要であることを明らかにした。2015年度は、心肥大モデルに対するグレリンの治療的効果を、メカニズムを含めて検討した。結果、グレリンは副交感神経活性を賦活化することで、心肥大の原因となる炎症性サイトカインの産生を抑制していることが明らかとなった。最終年度は、グレリンがどの細胞におけるGHS-Rに結合することで治療的効果を発揮しているかについて検討した。まず神経細胞・骨髄細胞特異的GHS-Rノックアウトマウスに心筋梗塞モデルを作製して術後2週間の生存率を検討したところ、骨髄細胞特異的GHS-Rノックアウトマウスでは対照群と同程度であったのに対し、神経細胞特異的GHS-Rノックアウトマウスでは対照群よりも低値であった。さらに交感神経・副交感神経特異的GHS-Rノックアウトマウスについても同様の検討を行い、副交感神経特異的GHS-Rノックアウトマウスでは対照群よりも生存率が低下することを見出した。本課題により、グレリンは主に副交感神経におけるGHS-R受容体を介して循環器疾患モデルの病態を改善することが明らかとなった。本結果はグレリンを臨床応用するにあたって大変重要な基礎的データであり、その意義は大きい。
特記事項なし
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Endocrinology
巻: 157 ページ: 358-367
10.1210/en.2015-1344.
http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/biochemistry/