研究課題/領域番号 |
25461084
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
今井 靖 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20359631)
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研究分担者 |
武田 憲文 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60436483)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルファン症候群 / 大動脈解離 / 大動脈瘤 / 遺伝子解析 / 細胞機能解析 |
研究実績の概要 |
マルファン症候群に代表される遺伝性大動脈疾患は生命の危急に関わることが少なくないい。その点で発症前診断のメリットが高い疾患群と考えられる。その診断における遺伝子変異解析は、マルファン症候群においては診断基準に加えられるなどその重要度が増している状況にある。本研究においては、それら疾患患者を対象に新規原因遺伝子探索を含めて遺伝子変異解析を行うとともに、その変異による血管構成細胞への機能的変化について、細胞の分化誘導のシステムも利用しつつ検討することを研究課題としている。患者血液由来のDNAを古典的な直接シークエンス法によってマルファン症候群の原因遺伝子であるFBN1, TGFBR1, TGFBR2 、また家族性大動脈解離においてはACTA2, MYH11について解析を実施した。 マルファン症候群においては約3/4の症例においてFBN1遺伝子に変異が同定された。家族性大動脈解離の1家系では新規のMYH11変異を同定した。その変異部位は種差を超えて保存され、しかも心筋ミオシンにおいてもアミノ酸配列が保存されている領域であった。現在、その遺伝子変異が血管平滑筋および間質へ及ぼす機能的変化について遺伝子改変マウスの作成の準備を進めているところである。 また類縁疾患であるが、遺伝性クモ指症、大動脈解離・瘤の家系でFBN2変異を検出し論文報告をしている。 細胞生物学的機能解析は解析が遅延しているが次年度において新規にとらえられた遺伝子変異の一部について細胞機能解析を行うことで本プロジェクトをまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主任研究者が昨年、現在の医療機関へ転勤したこともあり、基礎研究を行う環境が未整備であることに加えて、診療に関わる比重が高いこともあり、対象症例の収集が進む一方で基礎的検討が遅延した。 共同研究者の協力もあり、基礎実験を行う環境も整備出来たことから次年度にて細胞生物学的な検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
iPSといった新しい発生工学的技術も本研究に加え発展させる予定としているが、iPSの血管平滑筋、間質系細胞への分化誘導が文献的にも研究会レベルでも難しいといわれている。機能解析について検出された遺伝子変異をマウスに導入した遺伝子改変マウスの作成に着手しており、ヒト細胞での検討ではないが遺伝子・細胞工学技術を活用して解析を今後進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主任研究者 今井靖が東京大学から自治医科大学へ異動し、本対象となる心臓・血管疾患の診療、データ収集は継続的に行えている一方、基礎的研究を行う環境が整わず、研究に遅延を生じてしまった。共同研究者の武田憲文氏のもとで、遺伝子解析および細胞機能解析を進めているが、最終年度で、自治医科大学、東京大学の両者で本プロジェクトを推進させたい。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子変異解析は多数の症例を対象に実施し、多くは既知の遺伝子変異であったが、一部の症例で新規変異を検出できた。最終年度は細胞または遺伝子改変マウスを用いて、既に我々の元で検出した遺伝子変異についての機能解析を進める予定であり、その過程で繰り越された研究予算も含めて活用する予定である。
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