研究課題
高比重リポ蛋白(HDL)粒子は多彩な動脈硬化抑制作用を持ち、これまではHDLの量的指標として血漿HDLコレステロール(HDL-C)濃度が用いられてきた。しかし、最近の介入試験ではHDL-C上昇薬の心血管イベント抑制効果は証明されず、HDLの機能、とくにコレステロール引抜き能と動脈硬化との関係が重要視されている。従来のコレステロール引抜きの測定には、放射性標識コレステロールを培養マクロファージに取り込ませ、HDLの代用としてポリエチレングリコールによるアポB除去血清に引き抜かれたコレステロールを測定するため、簡便性や再現性で多くの問題があった。我々は、 放射性同位元素や培養細胞を用いずに、血清中のHDL粒子に蛍光標識コレステロールを直接取込ませ、プレートに固相化したアポA-I抗体でHDLを捕捉した後のHDLの蛍光強度を「HDL特異的コレステロール取込み能」として測定する新規の測定系を開発した。健常人の血清を用いて検討すると、新規のコレステロール取込み能は、細胞を用いた従来のコレステロール引き抜き能と強い相関を認めた。そこで、スタチンを中心とした薬物療法により血清LDL-C濃度が100mg/dL未満に管理されている125人の冠動脈疾患患者のコレステロール取込み能を測定したところ、冠危険因子の集積に伴ってコレステロール取込み能が低下していた。また、カテーテル治療後に再治療を必要とした患者では、必要としなかった患者に比べて取込み能が低下していた(p<0.05)。多変量解析では取込み能は再治療の規定因子であった。以上より、コレステロール取込み能はHDLの機能を反映しており、内服治療によりLDL-C濃度が適切に管理されている冠動脈疾患患者において残余リスクとなることが示唆された。
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Ciculation Journal
巻: 79 ページ: 2017-2025
10.1253/circj.CJ-14-0750.