近年、わが国では、食生活の欧米化、高齢化社会の到来、メタボリック症候群の増加などの社会背景により、冠動脈疾患のみならず、大動脈、頸動脈、下肢動脈などの全身におよぶ動脈硬化性疾患が急速に増加してきている。この中でも大動脈の動脈硬化性病変(大動脈プラーク)は、脳梗塞や動脈塞栓症の発症をもたらすため、その予知・予防や発症メカニズムの解明は重要なテーマである。本研究では、大動脈プラークの進展や不安定化に対し、炎症および酸化ストレスに関与するバイオマーカーおよび心血管画像診断法による多面的アプローチにて検討し、そのメカニズムを解明することを目標としている。本年度は最終年度として、これまで収集したデータから経食道心エコーで評価した大動脈プラークと頭部MRIで検出した無症候性脳梗塞との関連性、および血液バイオマーカーとの関連性について検討している。その結果、大動脈の不安定プラークの存在は、無症候性脳梗塞との関連性を有することが示され、学会および学術誌に報告した。また、現在、大動脈プラークと血液バイオマーカーとの関連性を検討すべく、374例の血液検体を解析中である。これらの結果についても、学会および学術誌にて発表する予定である。
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