研究課題/領域番号 |
25461088
|
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
上村 史朗 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60224672)
|
研究分担者 |
添田 恒有 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20624779)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 冠動脈疾患 / イメージング / 光干渉断層 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
急性冠症候群(ACS)の発症には冠動脈硬化病変の局所に浸潤する単球(マクロファージ)が原因となって惹起されるプラークの不安定化が重要な役割を担っているが,不安定化したプラークをACSの発症前に発見して有効な治療に結びつけることは実現していない.一方、Frequency Domain OCT(FD-OCT)は,中心波長1,300nmの近赤外線帯の波長可変レーザー光の反射波の干渉解析から,最大10μmに達する空間解像度で組織性状を画像化できるイメージング装置である.カテーテル型FD-OCTの臨床使用により,従来では評価が不可能であった冠動脈プラーク内の微細構造を病理像に匹敵する精度で評価することが可能となりつつある.申請者らは,本邦での先駆けとして冠動脈疾患の診断にOCTを導入し,現在までに1000症例を超える冠動脈プラークの観察と解析を行ってきた.特に,長期の観察期間中に血管内腔の狭窄が進展する冠動プラークのOCTでの形態学的特徴を解析し,薄い線維性被膜で覆われた脂質性動脈硬化病変(Thin Cap Fibroatheroma: TCFA)と冠動脈プラーク内に発生するneovascularizationが急速な内腔狭窄進展に対する予測要因であることを証明している。さらに最近には、冠動脈プラーク表面に浸潤してくるマクロファージも病変の不安定性と進展に深くかかわることも示してきた。本研究では動脈硬化プラークに浸潤するマクロファージを干渉断層法(OCT)を用いて反射波の干渉特性を同定し、プラークの不安定性を定量的に評価できる診断法を確立することを第一の目的としている.本年度においては、不安定な特徴を持つ冠動脈プラークの冠動脈内での分布様式の検討、不安定プラークに対するカテーテル治療が治療後における微小心筋梗塞の発症にかかわる検討、さらに不安定プラークの形成における分岐部でのshear stressの解析を行い、以下の研究論文として報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては、光干渉断層法による不安定プラークの同定法を検証した。さらに本法を用いて検出される不安定プラークの冠動脈全体における分布様式をshear stressとの関連において検討できた。さらに、不安定プラークに対するカテーテル治療が高頻度に微小心筋梗塞を惹起させることを示し、不安定プラークの短期的な臨床的意義と光干渉断層法の予後予測指標として重要性を示すことができたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在,虚血性心疾患の治療として冠動脈インターベンション治療と冠危険因子に重点を置いた薬物治療が行われているが,このような治療を行っても二次イベント発症率は著明に高い.この原因には、虚血性心疾患を発症した時点において、虚血の責任となる病変以外に、狭窄度が低くても進展や破たんの可能性を内在する非責任病変の存在が深くかかわっており、その特徴から不安定なプラークとして分類し、その臨床的重要性を明らかにしていく必要がある。すなわち,二次イベントに結びつく不安定プラークを事前に同定し,特異的な治療を行っていく必要性が求められる. 本年度までに解明した光干渉断層法によるマクロファージ浸潤の定量的評価法を臨床例に適応し、平成27年度においては、急性冠症候群患者における非責任冠動脈に存在する非狭窄性不安定プラークの自然歴、および強化スタチン療法などによる治療的介入時のプラーク安定化の継時的変化を観察する予定である。 本研究の成果によって,個々の患者の背景・OCTで臨床的に得られる冠動脈硬化巣の不安定性を勘案した重症心血管疾患に対するテーラーメード治療法の開発につながると考えている.
|