冠動脈インターベンション治療(PCI)と薬物治療の進歩により、急性冠症候群(ACS)患者の急性期予後は著明に改善された。しかし、冠動脈疾患全般においては、残存あるいは新規に出現する不安定動脈硬化性プラークの破綻による二次心血管イベントの発症率は未だ非常に高く、不安定プラークの正確な診断と不安定プラークをターゲットとした効率的な安定化治療法の開発が望まれている。我々は本研究を通じて、動脈硬化病巣を光干渉断層法(OCT)を用いて詳細に観察、検討することによって、陽性リモデリングを伴う多量の脂質沈着、脂質コアを覆う線維性被膜の薄層化(Thin Cap Fibroatheroma: TCFA)、マクロファージを主体とする炎症細胞の浸潤、プラーク内に新たに出現する微細血管(vasa vasorum)の密度増大などが不安定プラークを特徴づける重要な所見であることを、基礎的・臨床的アプローチによって明らかにした。特に動脈硬化病変へのマクロファージの集簇は、OCTでの観察時点におけるプラーク局所での炎症反応の活動性と相関し、さらにその後のプラーク病変の進展あるいは破綻に関与する指標として極めて重要性が高いことを確認した。 さらに最終年度においては、OCTによってヒト冠動脈病変に確認できるマクロファージの浸潤およびvasa vasorumが、(1)冠動脈分岐部における動脈硬化プラークの分布様式に及ぼす影響、(2)プラークの不安定性を介してPCI後の微小心筋梗塞の発症、(3)冠動脈ステント留置後の新生内膜内に発生する新規動脈硬化病変(neoatherosclerosis)の発症、(4)冠動脈ステント留置遠隔期における心血管イベントの発症に深く関与していることなどを明らかにして論文として発表した。
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