研究概要 |
平成25年度で約100名の患者登録を行った。登録したすべての患者で上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(flow-mediated vasodilation; FMD)およびstiffness parameterβ(SPβ)、NO放出による血管拡張反応に伴う上腕動脈SPβの変化および24時間自由行動下血圧を測定し、採血を行った。 SPβと24時間平均血圧値との相関を100例登録終了時点で解析した結果では、安静時のSPβと収縮期血圧とは有意差を持ってはいないが、拡張期血圧とは有意に相関していた(R=0.27, p=0.009)。夜間血圧について、収縮期血圧は有意差は出なかったものの(R=0.11, p=0.30)、拡張期血圧は有意な相関が見られた(R=0.28, p=0.005)。脂質代謝因子として中性脂肪と有意な相関が見られているが(R=0.20, p=0.045)、高感度CRPとは現時点ではまだ有意差は得られていない(R=0.11, p=0.27)。他の因子との相関として、SPβはFMD測定時のベースラインの上腕動脈径に強く影響されることが分かった(R=0.27, p=0.009)。上腕動脈径は体格、性別、年齢などに影響を受け、若年男性では大きくなる。そのために、血管径の大きい若年者でSPβは高値となり、SPβの解析にあたっては年齢あるいは血管径の補正が必要となる可能性がある。100例の解析では、年齢、身長、体重を補正すると、ベースラインの上腕動脈径はSPβの独立した規定因子であった(β=0.27, p=0.009)。年齢や血管径で分けてSPβと血圧などの因子を解析する必要があると考えられ、その際の統計学的パワーを維持するために今後患者登録を進めていく。 FMD測定で得られたデータに関しては、平成25年度に2件の論文を作成し掲載された。平成26年度はSPβの臨床的意義について学会発表、論文作成を進めていく予定である。
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