研究課題
基盤研究(C)
末梢血単核球中の未分化血管内皮前駆細胞(Endothelial Progenitor Cell = EPC)の増幅・分化培養による評価系開発に成功した(特願第2012-218206号)。本培養系を用いて、末梢血単核球中CD34+細胞分画の未分化EPCの分化、増幅に対するCD34-細胞分画の細胞間クロストークにおいてNotchシグナルの関与を探索した。成果として、1)幹・前駆細胞の分化・増幅に関係するNotchシグナル抑制剤のγsecretase inhibitor添加した末梢血単核球の本培養においてEPC分化増幅能の抑制が認められ、Notchシグナル系が重要であることが判明した。2)次に、Jagged-1(Jag-1)またはDelta like-4(DLL4)の中和抗体を添加し末梢血単核球のQQ培養を実施した。Jag-1抗体はEPCの増幅よりも分化を抑制し、DLL4抗体は分化よりも増幅をそれぞれ抑制した。3)CD34-細胞分画の中で単球(CD14+細胞)、リンパ球(CD3+細胞)、その他の細胞(CD34-/CD3-/CD14-細胞)の各細胞群とCD34陽性細胞の共培養を行い、EPC分化、増幅における責任細胞群を同定した。結果、CD14+細胞との共培養系においてCD34+細胞の機能性EPCコロニーが著増した。この結果は、EPCの分化・増幅能においてCD34細胞とCD14細胞との細胞間クロストークが存在することを意味する。以上の結果から、CD34+細胞のEPC増幅、分化において単球系の貢献が重要であり、その機構としてCD34+細胞のNotchリセプター及び単球系のJag-1やDLL4リガンドの発現が想定される。次年度以降は、CD34+細胞のEPC増幅・分化におけるCD34+細胞と単球系のNotchシグナルの重要性を検証する。
2: おおむね順調に進展している
1) EPC (CD34+細胞)の分化・増幅におけるCD34-細胞中の単球(CD14+細胞)の促進効果を見い出した点、2) EPC (CD34+細胞)の分化・増幅における細胞間機能性分子としてNotchシグナルの重要性を見い出した点、以上は、今後の研究計画遂行における基盤研究成果であり、次年度以降の円滑な研究計画の実施に繋がると考えられる。
1)平成26年度は、EPC増幅・分化における責任細胞の単球(CD14細胞)と未分化EPCのCD34+細胞間のNotchシグナルを探索する。(1) 末梢血単核球より分画採取したCD14細胞におけるNotchリガンド(Jag-1、DLL4及びDLL1)、CD34+細胞におけるNotchリセプターの発現を定量的PCRやFlow Cytometryにより確認する。(2) Jag-1、DLL4またはDLL1のsiRNAを導入したCD14細胞とCD34+細胞の共培養、あるいはこれらのNotchリガンドの各中和抗を添加したCD14細胞とCD34+細胞の共培養を実施し、CD34+細胞のEPC増幅・分化能抑制効果を検討する。2)平成27年度は、Jag-1、DLL4またはDLL1のsiRNAを導入したCD14+細胞とCD34+細胞の混合細胞群、または共培養細胞群をBalb/cヌードマウスの下肢虚血モデルを作成し、虚血下肢に移植することにより、その血管再生能を生理学的、組織学的に対象細胞移植群と比較する。3)以上の研究により、EPC増幅・分化に寄与する責任細胞分画の単球とCD34+細胞のNotchリガンド・リセプターシグナルによる細胞間クロストークの重要性が証明され、本研究課題の目的達成が可能となる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
Cell transplantation
巻: 23 ページ: 167-179
10.3727/096368912X658007
Trends in cardiovascular medicine
巻: 23 ページ: 99-103
10.1016/j.tcm.2012.09.007
Stem cell research & therapy
巻: 4 ページ: 4
10.1186/scrt168
Diabetes
巻: 62 ページ: 3207-3217
10.2337/db12-1621
Journal of the neurological sciences
巻: 328 ページ: 41-50
10.1016/j.jns.2013.02.013