研究課題
目的;ヒト血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell= EPC)の分化、増幅に及ぼす細胞間分子機構として、単球 (CD14+細胞)と未分化EPC (CD34+細胞)との責任Notch ligand/receptorを解明することを目的とした。方法及び結果;ヒト末梢血単核球のEPC増幅・分化培養(QQ培養)細胞について、flow cytometryによる解析の結果、CD14+細胞中Notch ligandの発現細胞について、Delta like-1 (DLL-1) (9.55%)、Delta like-4 (DLL-4) (2.02%)、Jagged-1 (0.15%)の順に陽性率が高かった。また、CD34+細胞中のNotch receptorの発現細胞についてはNotch-1 (29.4%)とNotch-2 (27.1%)は同程度であった。Notch ligandのCD34+細胞のEPC増幅に与える影響について、G-CSF投与にて動員されたヒト末梢血CD34+細胞のQQ培養細胞のEPCコロニーアッセイを実施した。その結果、CD34+細胞のコロニー形成性EPC産生率について、対照群 (1.0%)とJagged-1群 (1.1%) に比較して、DLL-1 (1.7%)及びDLL-4 (2.1%)が高値を示した。また、分化度については、対照群 (56.9%)とJagged-1群 (52.1%) に比較して、逆に、DLL-1 (41.7%)、DLL-4 (7.9%)と低値を示した。考察;単球及び未分化EPCにはNotch ligand及びreceptorが発現しており、各Notch ligand単独での効果について、Jagged-1については、発現細胞も少なく不明であったが、DLL-4は未分化EPCの分化抑制的に増幅促進し、DLL-1は未分化EPCの分化は抑制せずに増幅を促進することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
1)ヒト末梢血に含まれる単球の未分化EPCの増幅・分化に及ぼす細胞間分子機構において、単球に発現するNotch ligand及び未分化EPC(CD34+細胞)に発現するリセプターを同定した点。2)各Notch ligandの未分化EPCの増幅・分化活性に果たす役割を検出できた点。以上の成果により、最終年度の実験計画が下記のように明確になった点において、最終年度は予定通り研究を遂行できると考えられる。
1)末梢血または臍帯血より未分化EPC(CD34+細胞)及びCD14+細胞及びTリンパ球(CD3+細胞)、または、細胞傷害性リンパ球(CD8+細胞)、ヘルパーTリンパ球(CD4+細胞)、さらには、制御性Tリンパ球(CD4+/CD25+細胞)を採取する。CD14+細胞にヒトDelta like-1、Delta like-4、Jagged-1のshort haiarpin RNA lentivirus vectorによりtransductionを行い、CD34+細胞とQQ培養を実施する。これらのNotch ligandの発現を抑制することによるEPCの分化、増幅への影響をEPCコロニーアッセイ及びflow cytometryを用いて評価する。2)EPCの分化、増幅が抑制されたNotch ligandについて、同様にQQ培養を実施し、ヌードマウスの下肢虚血モデルに移植する。レーザードップラーによる血流改善評価を実施し、さらに、組織学的に血管再生の定量的評価を実施する。以上により、特にCD14+細胞のNotch ligand-receptorシステムを介した単球のEPCの分化、増幅に貢献する機能を解明する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件)
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