研究課題/領域番号 |
25461093
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
廣 高史 日本大学, 医学部, 准教授 (10294638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 急性冠症候群 / プラーク破綻 / 血管内イメージング / 3次元画像構築 |
研究実績の概要 |
H26年度の研究目的の概要は、H25年度でえられた基礎データとその解析結果をふまえつつ、血管内イメージングでえられた急性冠症候群(ACS)を発症した患者とそうでない患者の冠動脈プラーク破綻の3次元的特徴を比較し、ひいてはACSの発症メカニズムの一端を解明するものであった。すなわち、破綻したプラークの中でACSを発症したものと、そうでないものの間にはどのような違いがあるかを比較検討した。その間には一定の違いがあることを定性的にはH25年度に発見したわけであるが、H26年度は、より定量的にそれを検証したわけである。その結果、ACSが発症したプラーク破綻の形状には、ある一定の定量的特殊性があることが判明した。すなわちACS発症には、プラーク破綻が血管長軸に対して縦長に進展しているタイプであり、かつそこで血液の流れが乱される構造物(flow disturber)の存在の有無が重要な決定因子であることが判明した。Flow-disturberとは、主として遊離線維性被膜がプラーク破綻口の下流に存在するタイプのことである。遊離端が下流側にあると、血流がその遊離端が存在しているために翻転したり淀んだりして撹乱されることが容易に想像できるため、Flow disturberと名付けたわけである。このことは多変量解析によっても有意であることが定量的に立証された。この結果は現在論文投稿中である。この事実をさらに理論的に解釈するため、H26年度はその形状を高速コンピュータ上にある流体力学的シミュレーション解析ソフトに入力し、血流の淀みがそれぞれの形状でどう異なるのかの解析を始めた。そしてFlow disturberによる血流撹乱の大要が定性的に明らかとなり、その中間的成果については学会でも報告した。これらの検討をより定量的に進め、研究の総括を行うべくH27年度に向けて研究を継続していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
99例の症例につき、当初の予定の100例以上のデータをほぼ満たしており、データ数においてはほぼ目的は達せられている。またACSを発症するプラーク破綻とそうではない破綻を区別する因子について、より詳細に、かつ多変量解析を用いてより精緻に規定因子が同定できた。またその因子は流体力学的に血流の淀み発生に密接に関連している可能性が高く、流体力学的にACS発症機序を解明する当初の目的の成就に迫るものである。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度においては、H25,H26年度でえられたデータを用いて、血流の淀みという観点から、どのような形状がACS発症の重要な規定因子なのかをシミュレーションを用いてより実証主義的に検討して、本研究を総括していく予定である。シミュレーションには一例の計算だけで数時間かかるために、できるだけ高速に計算処理をする必要があり、そのために十分なPCのスペックを有しておく必要がある。ハードウェア、ソフトウェアの整備とともに、当初の研究全体の目的である(1)急性冠症候群発症となるプラーク破綻の特徴抽出とそのメカニズム、(2)十分な血栓を惹起しうるプラークの破綻形状を明確にしめす画像化、(3)最終的にACSの発症を予測しうる包括的定量システムと治療法開発の糸口を見いだしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度分の予算額については、物品費の高騰ならびに流体解析精度をあげるために、また論文作成のために、種々のPC関連の機器の中で主として消耗品費が大半を占める結果となった。H26年分は、予定通り全額使用したが、昨年来繰り越されていたH25年度分の一部に次年度使用額が生じた。というのも、H25年度分の136600円については、当該見積もり品のバージョンアップが遅れたために、H27年度に注文する形となったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
その内容は、当研究が主として画像を扱う研究であり、それを精度の高いモニター表示が必要であり、またデータセキュリティ維持や論文印刷なども必要であり、これらに充当する消耗品に当てる予定である。
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