研究実績の概要 |
<H27年度(最終年度)の成果> 本研究の最終年度に当たるH27年度は、H25,26年度に2年間にわたって行ってきた、血管内イメージングでえられた急性冠症候群(ACS)を発症した患者とそうでない患者の冠動脈プラーク破綻の3次元的特徴を比較し、H25年度には定性的に、H26年度は定量的にその違いを検証して得られた知見を元に、その成果に対して流体力学的な理論的検証を行い、研究成果全体を総括することを目的として研究を行った。H25,26年度に収集したプラーク破綻の実データとして3次元座標の集合からなる3次元形状データを、流体力学的ソフトに移行し、そのプラーク破綻部周辺における冠動脈血流の流速分布のシミュレーションを行った。その結果、ACSを発症した破綻は、無症候性に終わった破綻に比べて、流速分布のばらつきが有意に大きいことがわかった。すなわち流速のばらつきが大きいことで、血流にムラが生じ、冠動脈の閉塞を来しやすい血栓ができやすくなることが推察された。なお、本研究に付随してACS患者のプラークの組織性状の特徴やプラークの安定化について調べた研究論文を発表した。 <研究期間全体を通じた成果> 冠動脈の破綻粥腫の血管内イメージング画像を収集し、ACSを発症したものとそうでないものとの間における相違について模索を重ね、その立体的特性を種々の角度から解析した後に、ACSに繋がる立体幾何学的特徴を発見した。すなわちACS発症には、プラーク破綻が血管長軸に対して縦長に進展しているタイプであること、かつそこで血液の流れが乱される構造物(flow disturber:遊離線維性被膜片がプラーク破綻口の下流に存在するタイプ)の存在の有無が重要な決定因子であることが多変量解析で判明した。これらのH25,26年度に得られた成果に基づいて、上記のH27年度の成果が得られたわけである。
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