研究実績の概要 |
ヒトの動脈硬化病変に類似の所見を示す遺伝性高コレステロール血症ウサギ(Watanabe heritable hyperlipidemic - myocardial infarction rabbit, WHHL-MIウサギ)においてGLP-1受容体作動薬による動脈硬化プラークの変化について比較した。10-12月齢のWHHL-MIウサギをコントロール群とGLP-1受容体作動薬投与群(GLP-1群)の2群に分けた。薬剤投与前、投与3か月後の腕頭動脈に対して血管内イメージング(血管内超音波、intravascular ultrasound, IVUS、光干渉断層計、Optical Coherence Tomography, OCT)を用いて動脈硬化プラークの進展について観察した。更に薬剤投与3か月後の腕頭動脈を摘出し病理標本を作製し観察した。OCTは造影剤を用いて観察部位の血液を一時的に除去することで鮮明な画像を観察することができる。しかし、腕頭動脈は弓部大動脈からの分岐直後のため、血管内の血液を完全に除去することが困難であり、プラーク画像解析および評価に値する結果を得ることができなかった。IVUSによる検討では薬剤投与3か月後のプラークの質については壊死性プラーク割合、石灰化プラーク割合はコントロール群において有意に多く認められ、線維性プラーク割合はGLP-1群において多く認められた。薬剤投与前、投与3か月後を比較すると、プラークの質の変化はコントロール群において壊死性プラーク割合、石灰化プラーク割合が増加し、線維性プラーク割合は低下した。また、実験終了時に採取した腕頭動脈を組織標本として評価を行ったところ、コントロール群ではマクロファージ組織成分、石灰化組織成分を多く認め、GLP-1群では平滑筋細胞組織成分および線維性組織成分を多く観察した。WHHL-MIに対してGLP-1受容体作動薬を投与することでプラークの質の安定化を示唆する所見を認めた。GLP-1受容体作動薬は、ヒト冠動脈プラークに対しても安定化作用を示唆した。
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