本研究は、急性大動脈症候群患者において、PET-CTを用いて大動脈壁内の炎症細胞浸潤を示唆する18F-FDGの集積程度を検討し、リスク層別化を確立することを最終目的としている。平成27年度は、平成26年度に引き続き、患者登録と急性期および慢性期PET-CT検査を施行した。現在までに急性期59例の登録を完了した。急性期のPET-CT検査では、当初の仮説どおり、偽腔開存型、偽腔閉塞型ともに解離した大動脈壁内に18F-FDGの取り込みを認め、炎症細胞浸潤が示唆された。これらの急性期の画像を解析した結果、偽腔開存型に比較して偽腔閉塞型解離のほうが大動脈壁内への18F-FDGの集積が強かった。このことは、偽腔閉塞型と偽腔開存型では発症機序および解離した大動脈壁の病態が異なっていることを示唆していると考えられた。本年度はさらに18F-FDGの集積を解離部位全体にわたって評価するため、大動脈走行に沿った長軸方向に解離部位を同定し、すべての断面にわたって、18F-FDGの取り込みをtotal FDG activity(全FDG集積量)として評価した。59例の急性大動脈症候群例で、短期から中期の臨床経過を検討した結果、急性期の全FDG集積量が高い症例ほど、有意に大動脈関連事象が多かった。この傾向は特に偽腔閉塞型解離の症例において顕著だった。この結果は、急性大動脈症候群例において、PET-CT検査で18F-FDGの集積を評価することによって、予後予測が可能であることを示唆していると考えられた。今後は、偽腔閉塞型と偽腔開存型解離それぞれにおいてリスク層別化が可能かどうかを検討するために、平成30年度まで研究を継続して検討する予定である。
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