研究課題/領域番号 |
25461098
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
八尾 博史 独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (20265010)
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研究分担者 |
並河 徹 島根大学, 医学部, 教授 (50180534)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 過剰食塩 / 局所脳虚血 / 脳梗塞 / 高血圧自然発症ラット / 脳血流 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
申請課題の「過剰な食塩摂取による脳梗塞病態増悪の機序に関する実験的研究」に関して、生理的食塩水を飲料水として14日間投与することにより中大脳動脈閉塞による脳梗塞容積の増大(112±27 [S.D.] mm3 vs. 77±12 mm3)を確認した。その機序として、Laser-Doppler flowmetryの二つの測定法(申請書において示した1点での測定とスキャニング)により中大脳動脈閉塞後の脳血流減少が顕著になることを示した。食塩負荷により血液脳関門破綻の程度(虚血中心部および辺縁部のアルブミンおよびヘモグロビン含量をSELDIにより測定)は影響を受けなかった。脱血による低血圧に対する脳血流減少の程度(すなわち脳血流自動調節脳の下減域)も食塩負荷により有意な影響を受けなかった。また、正常血圧ラットでは、過剰食塩の脳梗塞容積に及ぼす影響は有意差にいたらなかった。ここまでの結果を原著論文(PLoS One 2014;9:e97109)として発表した。
平成26年度(2年目)までの実験により課題の申請内容の主要な部分は終了したが、研究の過程で食塩負荷を飲料水として行った場合、ラット個体間で飲水量にかなりのバラツキがあることが観測された。この点に関して、食塩負荷を固形飼料(4%NaCl)により行うとほぼ一定量の食塩量を各ラットに負荷できることが予備実験の結果判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「過剰な食塩摂取による脳梗塞病態増悪の機序に関する実験的研究」の年次計画に対して、申請前の予備的検討において生理的食塩水を飲料水として投与することにより脳梗塞容積の増大を確認していたが、その機序として中大脳動脈閉塞後の脳血流減少が顕著になることを示した。1年目(平成25年度)の脳血流自動調節脳の下減域に関する実験、2年目(平成26年度)の血液脳関門破綻に関する検討は終了し、3年目に予定していた正常血圧ラットにおける過剰食塩の脳梗塞容積に及ぼす影響の実験まで終了した。ここまでの結果を原著論文(PLoS One 2014;9:e97109)として発表した。したがって、本申請課題は当初の計画以上に進展していると考えてよいと思われる。
実験計画が予定より早く進行しているので、今後さらに「過剰な食塩摂取による脳梗塞病態増悪の機序」について考察するとともに、過剰な食塩の障害機序として報告されている酸化ストレスなどの関与についても踏み込んで検討できる状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
2年目までの実験により、高血圧自然発症ラットにおいて生理的食塩水負荷により、中大脳動脈閉塞後の脳血流減少が顕著となり脳梗塞サイズが増大することが明らかとなった。過剰な食塩負荷は脳血流自動調節脳の下減域には影響しなかった。また、中大脳動脈閉塞後の血液脳関門破綻の程度にも食塩負荷による増悪はなかった。ここまでの結果から研究目的のかなりの部分に対して結論を出すことができたが、研究の過程で食塩負荷を飲料水として行った場合、ラット個体間で飲水量にかなりのバラツキがあることが観測された。この点に関して、食塩負荷を固形飼料(4%NaCl)により行うとほぼ一定量の食塩量を各ラットに負荷できることが分かった。現在、固形飼料による食塩負荷の影響を検討中である。
過剰な食塩摂取による脳梗塞病態増悪の機序に関して、原著論文(PLoS One 2014;9:e97109)の中で示したように、食塩負荷により中大脳動脈閉塞時の側副血行路の機能不全が関与し、酸化ストレスなどによると想定される血液脳関門への影響は確認されなかった。しかしながら、本実験は中大脳動脈の永久閉塞のみを行ったものなので、再灌流条件下(reperfusion injury)での検討は行っていない。3年目(最終年度)は再灌流条件下での食塩負荷が脳梗塞病態に及ぼす影響についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度予算はほぼ計画通り使用したが、27,249円の残高を計上した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は実験動物(ラット)使用量が予定より超過しそうなので、上記残高はラット購入費用として使用する予定である。
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