研究課題/領域番号 |
25461105
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大橋 浩二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (10595515)
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研究分担者 |
大内 乗有 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (00595514)
柴田 玲 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (70343689)
室原 豊明 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90299503)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Follistatin like 1 / カルディオカイン / 慢性腎臓病 / AMPキナーゼ / 炎症性サイトカイン / 酸化ストレス |
研究概要 |
本研究課題は心臓から分泌されるカルディオカインであるFollistatin like (Fstl)-1の慢性腎臓病における役割を検討するものである。心臓特異的Fstl1欠損マウス(cFstl1-KO)は、心臓特異的プロモーターであるαMHC-CreマウスとFstl1 floxマウスとの交配により作成し、Basalで体重、心機能、心重量等で差が無いことを確認した。このマウスに5/6腎摘手術を作成したところ、対照マウスでは術後1週目でFstl1の血中濃度が2倍程度に上昇することを見出し、cFstl1-KOでその上昇を認めないことが明らかとなった。術後8週目に採尿の後に解剖し、遺残腎での組織学的検討、遺伝子発現レベルを検討した。cFstl1-KOでは対照マウスと比較して、尿中のアルブミンが有意に上昇しており、腎糸球体面積、細胞数等の糸球体障害の指標、間質線維化も上昇しており、炎症性サイトカイン、酸化ストレスマーカーの遺伝子発現も上昇していることが明らかとなった。次に野生型(WT)マウスに5/6腎摘手術4週後にアデノウイルスの系でFstl1を過剰発現させることにより、対照群と比較して尿中アルブミンの低下、組織学的糸球体障害、間質線維化、炎症性サイトカインと酸化ストレスマーカーの遺伝子発現も低下していることが明らかとなった。Fstl1による腎保護作用のメカニズムをしては、糸球体でのAMPキナーゼのリン酸化(pAMPK)が、cFstl1-KOで低下しており、Fstl1過剰発現群で上昇していることが明らかとなった。培養メサンギウム細胞を用いた検討でもリコンビナントFstl1蛋白の添加によりpAMPKが上昇し、ドミナントネガティブ型のAMPKの添加によりFstl1による抗炎症作用がキャンセルされることが明らかとなり、Fstl1はAMPKシグナルを介して腎保護作用を発揮することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5/6腎摘モデルによるFstl1の保護作用については、培養細胞によるメカニズムの検討まで進んでおり、計画以上に順調に進展している。ただし当初の研究計画においては、尿管結紮モデル、ストレプトゾトシン投与により1型糖尿病モデルを作成し、糖尿病性腎症モデルも予定しているが、こちらの検討はまだであり、全体として考えると、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
5/6腎摘に加え、尿管結紮モデル、糖尿病性腎症モデルにおいてもFstl1の作用を検討する。またメカニズムに関しては、AMPキナーゼを介するところまでは進んでいるが、その上流、下流のメカニズムについては明らかではない。上流としてはこれまでに報告されているFstl1の受容体であるDIP2Aを介しているのか、他の新たな受容体を介しているのかも検討していく予定である。
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