研究課題
本研究課題は、心臓から分泌されるカルディオカインであるFollistatin like (Fstl)-1の慢性腎臓病における役割を検討するものである。心筋特異的Fstl1欠損マウス(cFstl1-KO)は、心筋特異的プロモーターであるαMHC-CreマウスとFstl1 floxマウスとの交配により作製した。このマウスに5/6腎摘手術を作製したところ、対照マウスでは術後1週目でFstl1の血中濃度が2倍程度に上昇したが、cFstl1-KOではその上昇を認めず、腎障害時に上昇するFstl1は主に心筋から分泌されることが示唆された。術後8週目に採尿の後に解剖し、遺残腎での組織学的検討、遺伝子発現レベルを検討した。cFstl1-KOでは対照マウスと比較して、尿中のアルブミンが有意に上昇しており、腎糸球体面積、細胞数等の糸球体障害の指標、間質線維化も増悪しており、炎症性サイトカイン、酸化ストレスマーカーの遺伝子発現も上昇していることが明らかとなった。さらに野生型(WT)マウスに5/6腎摘手術を施行し、術後4週目にアデノウイルスの系でFstl1を過剰発現させることにより、対照群と比較して、尿中アルブミンの低下、組織学的糸球体障害、間質線維化、炎症性サイトカインと酸化ストレスマーカーの遺伝子発現も低下することが明らかとなった。Fstl1による腎保護作用のメカニズムに関しては、遺残腎糸球体でのAMPキナーゼのリン酸化(pAMPK)が、cFstl1-KOで低下しており、Fstl1過剰発現で上昇していることを見出した。また培養メサンギウム細胞においても、Fstl1蛋白の添加により、pAMPKが上昇し、ドミナントネガティブ型のAMPKの添加により、Fstl1による抗炎症作用がキャンセルされることが明らかとになり、心筋由来Fstl1はAMPKシグナルを介して腎保護作用を発揮することが示された。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
J Am Soc Nephrol.
巻: 26 ページ: 636-646
10.1681/ASN.2014020210.