研究課題/領域番号 |
25461108
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真田 昌爾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 招へい教員 (70593797)
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研究分担者 |
肥後 修一朗 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00604034)
南野 哲男 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30379234)
朝野 仁裕 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60527670)
塚本 蔵 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80589151)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心不全 / 内因性免疫 / G蛋白共役受容体 / 心筋リモデリング |
研究実績の概要 |
本年度は各種細胞外刺激に伴うGPCRとST2受容体との共役状態を解明する為、HEK293細胞又はラット新生仔心筋細胞で、AT-II受容体とST2受容体の細胞内ドメインにFRET分子を共発現させることを試みた。しかしST2L受容体分子の細胞内ドメインにFRET分子を共発現させた蛋白質が期待通り発現せず、FRET分子に詳しい講座と共同研究も試みているが、GPCRとST2受容体、2分子間の直接作用を観察する実験は本年度中まだ成功しておらず、我々は現在も様々な手法を用いて試みを継続しているところである。 一方、TLR-4とST2Lが細胞内共役因子MyD88を共有し、異なる分で結合して奪取しあうことが結晶解析による結合実験を含めて報告(Basith et al. PLoS One)されるなど、近年の知見が集積し、当初想定していたST2LのSequestration(Brint et al. Nat Immunol.)によるシグナル調節の可能性はほぼ確実と考えられるに至ってきている。 そこで我々は一部方針を変更し、係るGPCRシグナル機序とIL-33/ST2のシグナル共役が真に心不全病態の重症度に寄与するか否か検討する為、新たに導入したIL-33KOマウスを用いて、心筋肥大・心筋アポトーシスを伴って慢性心不全化するマウス大動脈縮紮(TAC)圧負荷慢性心不全モデルにて、心筋リモデリングに伴う各指標及び生存率の低下を直接的に実証する研究を、前倒しで先行させることとした。 その結果、IL-33KOマウスではWTマウスに比べ、TACを施した8週後の心筋肥大・心拡大・心筋線維増加・心筋細胞死(ネクローシス・アポトーシス)及び心機能異常についてWTマウスよりも増悪が見られ、初期的に従前本研究者らが発表したST2KOマウスによる経過とおおむね一致する、期待に沿った結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の第一目標である、FRET会合分子の強制発現について、膜状受容体作用を持つST2L分子の細胞内ドメインにFRET分子を共発現させた蛋白質が期待通り発現せず、FRET分子に詳しい大阪大学医学部医化学教室の高島成二教授、滋賀医科大学生化学教室の扇田久和教授の研究室にも意見を仰ぎ、試行錯誤を続けているが、発現量の不安定さと発現蛋白のaggregation等がどうしても解決せず、FRETの会合によるGPCRとST2受容体、2分子間の直接作用を観察する実験は本年度中に成功していない。現在引き続き、標記研究室との共同研究支援を含めて実施中である。これは遅延していると言わざるを得ない。 一方、GPCRシグナル機序とIL-33/ST2のシグナル共役が真に心不全病態の重症度に寄与するかを検討する為の、IL-33KOマウスに関するマウス大動脈縮紮(TAC)圧負荷慢性心不全モデルにて検証する研究は、理論的根拠が形成されたこと、準備が早く進んだこと等から来年度施行予定のものを繰り上げて施行し、初期的解析で期待に沿う良好なデータを得た。これは予定より進んでいるものであり、係る結果が良好なため、計画全体としては順序の差はあるも概して計画に沿ったスピードで進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度において、当初予定していた計画の一部実験が完遂していないことに関し、今後それらの原因を引き続き洗い出して完遂に向け尽力する一方、当初の作業仮説がおそらく間違っていないことに関する知見が更に集積されてきていることに鑑み、一部で来年度の試験予定を先取りし、最終的な結果を得ることを第一義に、さらに研究を加速させる。即ち、ST2KO・IL-33KOマウスを用い、マウス大動脈縮紮(TAC)圧負荷モデル等にて心筋肥大・心拡大・心筋線維増加・心筋細胞死(ネクローシス・アポトーシス)及び心機能異常及び生存率の低下(別グループで検討)につき一致した結果が得られるか、併せて生存心筋組織細胞のNF-kB、MAPK及びAkt活性化の差異を検討し、IL-33とST2が確かに刺激伝達系を共有して同様の表現型を示すことを確認する。更にIL-33KOマウスでは、ST2KOマウスと異なり心不全の進展がrIL-33付加にてWTマウス同様に回復するか確認する。また、係る分子機序の外的調節が薬剤的・遺伝子的制御により可能か、つまりTLRシグナル伝達因子の修飾による心不全の治療が真に成立しえるかを検証する。
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