研究課題
本研究では、生活習慣病の蔓延から著増する一方、最近のEBM進歩でも全く克服されない慢性心不全において、自然免疫を担うToll様受容体IL-33/ST2 の病態生理学的意義、G蛋白共役受容体(GPCR)シグナル経路とのストレス応答依存性共役の分子機序、及びその心不全重症度への寄与の解明を目指した。新生仔ラット心筋細胞にGPCR刺激、フェニレフリン及び酸化ストレス刺激を加え培養したところ、各群で心筋肥大、アポトーシス細胞数が大幅に増加したが、rIL-33蛋白によりこれらが大幅に減少し、更に既製のST2中和抗体及び可溶性ST2分画の付加によりIL-33の細胞保護効果が消去された。これは物理的伸展ストレスによる心筋細胞への障害性変化がIL-33とST2の結合による直接的作用で抑制されることを示す。細胞内刺激伝達シグナルとしてNF-kBとMAPK(ERK/JNK/p38)の活性化を確認したが、rIL-33付加によりNF-kBとJNK/p38のみ特異的に活性抑制され、ERKとAktは修飾されず、一方NF-kBを修飾するTNF-α・PDGF刺激も、GPCR刺激と異なり、IL-33では修飾されなかった。IL-33KOマウス群はWT群より、TACにより有意に生命予後が短縮した。またIL-33KO群ではWT群よりさらに心筋肥厚・心重量増加・肺水腫・心筋収縮低下等の心不全の病態生理の更なる悪化を惹起した。それらは炎症細胞浸潤、Th1/Th2サイトカインの発現アンバランス出現、心筋線維化及びそのマーカー分子発現、心筋肥大マーカー分子発現にても同様であった。結論として、機械的心筋刺激に伴う心筋リモデリングの悪化、心不全の悪化と生命予後の悪化が、TLRの一種ST2の内因性リガンドIL-33の欠損で直接的に惹起された。これらは非虚血性心不全におけるIL-33の治療手段としての可能性を示すものである。
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