研究課題/領域番号 |
25461109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
李 佩俐 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40464292)
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研究分担者 |
池田 信人 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50620316)
白吉 安昭 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90249946)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | LQT2 / mutant hERG / histine deacetylase / Histone deacetylase 6 / histone deacetylase 10 / chaperone / ubiquitination / protein quality control |
研究概要 |
1.変異hERG plasmidの作成とその発現解析:C末端にFLAGのepitope-tagを付けたhuman wild-type(WT) hERG のcDNAをpcDNA3ベクタに組み込み(hERG-FLAG). Missense変異 G601S-FLAG とR752W-FLAGはsite-directed mutagenesis方法で作成した。作成したplasmidsをそれぞれHEK293細胞に導入し、ウエスタンブロット法でhERG蛋白の発現を確認した。 2.Histone deacetylase inhibitor(HDACi)がLQT2を引き起こす変異hERG蛋白に及ぼす効果:変異hERG G601S-FLAG とR752W-FLAGをHEK293 細胞に導入24時間後に、三種類のhistone deacetylase inhibitorである trichostatin A(TSA)(0.1μM), SAHA(5μM)並びにscriptaid(1μM)をそれぞれ添加、投与24時間後にhERGの発現を検討した。Vehicleを添加した変異hERGは未熟型蛋白のみ発現するが、HDACiの投与が未熟型hERG蛋白を顕著に増加し、変異hERGの成熟型蛋白を誘導した。一方でHDACiはシャペロンHsp70, Hsc70 とHsp90に影響を及ぼさなかった。またhERG蛋白の分解に関与するE3りガーゼCHIPの変化は見られなかった。 3.Histone deacetylase(HDAC) 6 のKnockdownが変異hERG蛋白に及ぼす効果:HDACiによる変異hERG蛋白の成熟化の機序を特定するために、細胞質に存在するHDAC6 とHDAC10に着目した。変異hERG G601S-FLAG およびR752W-FLAGそれぞれをHEK293 細胞に導入、48時間後に、siRNA HDAC6 とsiRNA HDAC10による hERG蛋白に及ぼす作用を測定した。HDAC6 のknockdownは変異hERGを成熟化したが、HDAC10のknockdownは変異hERGの成熟化を誘導ができなかった。以上からHDAC6 はhERGの成熟過程に関与することが示唆された。LQT2はhERG遺伝子変異が原因で、hERG蛋白質が分解され、細胞膜に発現する成熟型蛋白質が低下、突然死や致死性不整脈を引き起こす疾患である。HDACiは変異hERG蛋白質の分解を阻止し、成熟を促進させることでLQT2の治療に有益かもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シャペロンHsp70/Hsc70 とHsp90はhERG蛋白質の品質管理に関与する報告があったが、histone deacetylaseはイオンチャンネルおよびhERGチャンネルに影響を及ぼす報告まだなかった。HDAC6のknockdownは変異hERG未熟型蛋白のレベルを著しく増加したことがHDAC6はhERG蛋白の分解に関与することが強く示唆された。又、成熟型蛋白質を誘導したことは特筆すべきことであり、新たな治療法になりうる可能性がある。今までの変異hERGの研究報告では、hERGチャネルinhibitor E4031, 低温培養およびantihistaminesが変異hERG蛋白質をレスキューするが、その副作用ために臨床応用が難しい。治療に繋がる新薬の開発はLQT2を引き起こす突然死の治療のために急務である。HDAC6が変異hERG蛋白質の分解と成熟に中心的な役割を演じることを見出したのは、今後創薬にも貢献出来る可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.新規特定したHDAC 6 が変異hERG蛋白質の分解と成熟に関与する経路を特定する、特にHDAC6が変異hERG蛋白質のacetylationやユビキチンに直接に関与するか、シャペロンを介するかを検討する。A. G601S-FLAGとR752W-FLAGをHEK293細胞に導入後、HDACiの添加の有無で、またHDAC6のknockdownとscramble siRNA投与でhERG蛋白質の分解速度を測定し、変異hERGのユビキチンレベルを検討する。B. 変異hERG蛋白のHDAC6のknockdownによるacetylationのレベルを測定する(hERG蛋白を免疫沈降後、acetylated- lysine antibodyを用いてウエスタンブロット。C. HDAC6によりレスキューされた変異hERGの局在を検討する(免疫染色後confocal 顕微鏡で検討)、またpatch clampを用いて変異hERGチャンネル活性を検討する。D. HDAC6は変異hERG蛋白質に及ぼす作用はシャペロンを介するかを検討する。HDAC6のknockdownによる変異hERG蛋白質とHsp90、Hsp70およびHsc7との結合性を免疫沈降とウエスタンブロット法で測定する。 2.histone deacetylase 6 のKnockdownによりレスキューされた変異hERG蛋白質の品質管理機構を解析する。HEK293細胞に変異hERGとsiRNA HDAC6およびscramble siRNAを導入後、anti-hERG extracellular 抗体を用いてタイムラプス法やchase experimentを用いてレスキューされた成熟型変異hERG蛋白質の発現変化と分解速度を測定する。 3.HDAC6がWThERG-FLAGとendogenous mouse ERGに及ぼす影響を検討する。 WThERG-FLAGとsiRNA HDAC6をHEK293 細胞に導入後、WThERG蛋白質の発現をウエスタンブロット法で測定する。B. Mouse 心筋細胞HL-1にmouse HDAC6に対する siRNAを導入後、ウエスタンブロット法でERG蛋白を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の残額が発生した理由 購入予定のHDAC10抗体は既存の抗体で代用できた。 研究費が実験に必要な抗体、培養液とtransfection 試薬に使用する予定です。
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