研究課題/領域番号 |
25461112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (10452757)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心不全 / 交感神経 / 心脳 臓器連関 / 食塩 |
研究概要 |
当該年度においては、心不全モデル(心筋梗塞モデルおよび圧負荷心肥大モデル)における、視床下部ミネラルコルチコイド受容体活性化(MR活性化指標SGK-1発現増加)とRAS系活性化指標(AT1R発現増加)をWestern blot法で確認した。炎症性サイトカインについては、まず、Western blot法で視床下部におけるTNF-α、IL-1βの発現評価を行った。各心不全モデルでは、モデル作成1週間以内の急性期においては、TNF-αの蛋白レベルの発現増加が確認できたが、IL-1βの有意な発現増加は確認できなかった。一方、4週間以降では、逆にTNF-αの有意な発現は認めず、IL-1βの発現増加を認めた。本モデルでは、同時に血中のIL-1βの濃度上昇もELISAにより確認できた。心不全における脳内炎症カスケードにおいてはTNF-αがその初期段階で重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 また、食塩嗜好性についても、ドリンクセンサーを使用して、正確に評価することが可能であった。特に圧負荷心肥大モデルでは、心機能低下が比較的緩徐に進行するモデルであるが、心機能低下(心不全重症度)が増すにつれて、食塩水(0.5%)のほうを、好んで摂取することが確認できた。 次年度は、この視床下部炎症性サイトカイン増加、特に初期に認めるTNF-α増加と求心性心臓交感神経(CSA)活性化との関連をTRPV1ノックアウトマウスを用いて明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の最大の目的である心不全モデルにおける視床下部炎症性サイトカインの増加の確認と食塩嗜好性増加の現象を捉えることができている。 また、心不全モデルについても、圧負荷モデルのみならず、心筋梗塞モデルでの検討も同時に行うことで、観察される現象が高血圧性心不全のみならず、虚血性心不全でも起こり得るものであると確認できた。 当該年度予定で、次年度繰越の研究項目は、Rac1活性の評価と左室内圧測定実験であるが、実験モデル作成は安定して可能となっており、次年度速やかに行うことが可能である。 一部次年度施行予定の求心性心臓交感神経活性化と視床下部炎症性サイトカイン増加関連の実験も行っており、全体的な進捗状況は順調と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度確認した心不全モデルでの脳内炎症性サイトカイン増加と求心性心臓交感神経活動との関連をTRPV1ノックアウトモデルを用いて行う。 本年度一部行っていない実験(Rac1活性評価や左室内圧測定)を速やかに行い、次年度前半には実験結果が得られるように実験予定を組んでいる。 次年度メインの実験は、TRPV1ノックアウトマウスでの検討であり、ノックマウス受け入れに伴う学内諸手続きを終了し、H26年5月中にはノックアウトマウスが納入される予定となっている。 このように、実験環境としても次年度も引き続き速やかに実験が行える状況が整っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた大きな要因は、予定していた国際学会への参加を行わなかったこと、一部の実験を次年度に繰り越したことによる。 繰り越し実験に使用する試薬、実験キット購入は、次年度に行う予定であり、適切に執行処理する予定である。 学会出張費用に関しても、次年度はこれまで得られデータ発表や、研究途中経過における他施設研究者との意見交換、情報収集のための学会出張に使用する予定である。
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