研究課題
基盤研究(C)
慢性心不全患者の予後は依然として不良であり、重症心不全の治療として心移植があるが、我が国においてはドナー不足の問題もあり、新たな治療法の確立が望まれている。申請者らは,胎盤由来成長因子(PlGF)およびその内因性拮抗物質である可溶型Flt-1の心血管疾患の病態における役割を継続的に研究してきたが,心不全領域においてこれらの分子と心血管系合併症の発症に着目した過去の検討はほとんどなく,申請者らのオリジナルの着眼点である.われわれはすでに現在までに可溶型Flt-1が腎障害患者の心血管系合併症を規定する重要な分子である可能性を発見し,可溶型Flt-1の補充療法の可能性を示している.今回の検討でsFlt-1が4型心腎連関の主要な合併症である動脈硬化症と心不全の両方を制御しうるかどうかにつき検討を行っている。われわれは全長のFlt-1をノックアウトすることなく、可溶性Flt-1を特異的に欠損させたマウスを作成した。可溶性Flt-1は通常Flt-1遺伝子からイントロン13がスプライスされないAlternative splicingによって生成される。イントロン13は可溶性Flt-1のスプライシングに重要な役割を示すと報告されておりイントロン13を欠失させることでエクソン13とエクソン14を直接結合させると、可溶型Flt-1の発現が著明に抑制されるとされている。現在、可溶型Flt-1ノックアウトマウスに大動脈結札(TAC)を行い検討したところ、sFlt-1ノックアウトマウス群において有意に肺水腫発生率と死亡率が高く、7日目の検討では心エコーにて心肥大と、左室駆出率の低下を認めた。組織の検討ではマクロファージの浸潤増加に加えて、繊維化の亢進を認めた。現在リコンビナントsFlt-1蛋白の投与がフェノタイプを改善しうるかどうかにつき検討を進めている。
3: やや遅れている
sFlt-1ノックアウトマウスのTAC施行後の解析は順調に進んでいるが、PHD2ノックアウトマウスからの肺胞マクロファージの単離がうまくできておらず、この点に関してはまだ、条件を検討中である。
sFlt-1ノックアウトマウスの解析はこのまま継続して行う予定である。また、PLGF中和抗体やVEGF中和抗体を用いた検討も予定通り行う。慢性心不全患者の採血を含めたサンプリングは進行中であり、26年度以後の課題として、解析を行っていく予定である。内因性可溶型Flt-1の制御因子の検討も同時に進行している。
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Kid Int.
巻: 85 ページ: 393-403
http://www.naramed-u.ac.jp/~1int/index.html