研究課題/領域番号 |
25461115
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
竹田 征治 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60398443)
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研究分担者 |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | sFlt-1 / 心不全 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者は動脈硬化、心不全を合併し心血管疾患の罹患率および死亡率が著明に高く、4型心腎連関に分類される。しかしそのメカニズムは明らかでなく有効な治療法は依然として見つかっていない。われわれはこれまでの検討で、動脈硬化促進的に作用するPlGF(胎盤由来増殖因子)やVEGF(血管内皮増殖因子)の内因性阻害物質である可溶性Flt-1(sFlt-1)がCKD患者で低下することを発見した. 5/6腎臓摘出マウスの腎臓と肺でsFlt-1の発現が低下していること、CKD患者血清のヒト内皮細胞への投与でsFlt-1の発現は低下し内皮細胞障害マーカの発現量が増加したことから、CKD患者の血管内皮細胞で血管内皮細胞障害が進展することでsFlt-1産生が低下することが示唆された。CKD症例の検討では血中PlGF/sFlt-1高値例は冠動脈病変の進行または心血管イベントの増加を認めた。ApoEノックアウトマウスに5/6腎臓摘出を行った検討では、コントロール群に比して動脈硬化病変が進行しリコンビナントsFlt-1の投与で動脈硬化病変の進展が抑制された。また、心不全についても臨床例で検討したところ、血中PlGF/sFlt-1高値のCKD症例は心不全の発症率も高値であった。sFlt-1の低下した病態が心不全にどのような影響を与えるかについてsFlt-1ノックアウトマウス(sFlt-1 KO)を作成し、圧負荷心不全モデル(TAC)を作製した。sFlt-1 KOは野生型に比してTAC後の心肥大と左室収縮能低下が進行しており、死亡率が有意に高値を示した。組織所見ではマクロファージと繊維化の増生を認め、ヒト透析心に類似した所見であった。また、sFlt-1 KOにおけるTAC後の心肥大と左室収縮能能低下はリコンビナントsFlt-1蛋白の投与で抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
sFlt-1ノックアウトマウスの結果が順調に出ている。TACモデルの作製にて心機能が低下し、sFlt-1蛋白の投与で改善することが示された。 肺水腫に関する検討は、肺水腫が安定して作製できず、進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
また、sFlt-1 KOにおけるTAC後の心肥大と左室収縮能低下に関する機序の解明に関する検討を進めていく予定である。 また、抗PLGF抗体や抗VEGF抗体の投与によりいずれの効果が強いのか、またマクロファージによる炎症の抑制として抗MCP-1抗体の投与などを考えている。 心不全を発症したヒト腎不全の組織を採取し、検討を予定している。
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