研究課題
基盤研究(C)
(1)加齢マウスにおけるPD-1+記憶型T細胞増加とインスリン抵抗性の関係 加齢に伴い脾臓のみならず、内臓脂肪組織においてもPD-1+記憶型T細胞の割合が有意に増加した。100週齢の加齢マウスは、11週齢の若年マウスと比べ、耐糖能異常とインスリン抵抗性を示した。抗PD-1抗体治療は80週齢の加齢マウスにおいて、食事摂取量、体重、内臓脂肪重量を変えることなく、耐糖能異常とインスリン抵抗性を有意に改善した。(2)食事性肥満マウスにおけるPD-1+記憶型T細胞増加とインスリン抵抗性の関係 4週齢から開始した高脂肪食飼育群では、著明な体重増加と内臓脂肪重量増加がみられ、18週齢の時点で通常食飼育群と比べ耐糖能異常とインスリン抵抗性を示した。高脂肪食負荷に伴い脾臓、内臓脂肪組織ともにPD-1+記憶型T細胞の割合が増加した。抗PD-1抗体治療は食事性肥満マウスにおいて食事摂取量、体重、内臓脂肪重量を変えることなく、耐糖能異常とインスリン抵抗性を改善した。また抗PD-1抗体治療は、内臓脂肪においてM1タイプマクロファージを減らし、制御性T細胞を増やし、脂肪組織での炎症性サイトカイン発現を減少させた。(3)PD-1+記憶型T細胞による炎症促進の分子メカニズム PD-1+記憶型T細胞は、PD-1-T細胞と比べ増殖能が低下していたが、osteopontinとIL-6を有意に発現していた。若年マウスから採取したPD-1-T細胞をCFSEでラベルし、食事性肥満加齢マウスに移植をしたところ、2週間後、PD-1+T細胞の割合が増加した。PD-1+CD44+T細胞をマクロファージと共培養した場合、PD-1-CD44-T細胞やPD-1-CD44+T細胞と比べ、マクロファージの遊走が増加し、炎症性サイトカインの発現が促進された。これらの効果は、抗osteopontin抗体、抗IL-6抗体添加で遮断された。
2: おおむね順調に進展している
一時期、中国人留学生が本研究に興味を持ち、実験に協力してくれた。とくにflow cytometryによる解析において、経験者である彼の貢献は大きかった。
平成26年度中の英語論文発表を目指したい。すでに英文誌に投稿し、編集者よりいくつかのアドバイスを受けた。それらを中心に実験を進め、研究の質を高めていきたい。具体的には、①加齢や食事性肥満によりPD-1+記憶型T細胞が増加する分子機序、②脂肪組織におけるPD-1+記憶型T細胞と他の炎症性細胞との相互関係、③PD-1+記憶型T細胞によるインスリン抵抗性の誘導機序、を解明する目的の研究を実施する。本年度中には、PD-1+記憶型T細胞と脂肪組織の炎症進展・インスリン抵抗性との因果関係を確立したい。
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