研究課題/領域番号 |
25461116
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
新村 健 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70206332)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 免疫老化 / 炎症 / T細胞 / インスリン抵抗性 / 肥満 / 脂肪細胞 / 抗体治療 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
1.脂肪組織における炎症性細胞のkinetics: 高脂肪食(HFD)負荷開始後2週間(6週齢)から内臓脂肪(VAT)においてマクロファージの有意な増加が見られ経時的に漸増した。CD4+T細胞のVATにおける増加は10週齢で初めて有意であったが、PD-1陽性記憶型(PD-1+MP)T細胞は6週齢から有意に増加し、経時的に漸増した。免疫染色検査による観察では、PD-1+T細胞は王冠様構造に局在しマクロファージと一緒に傷害脂肪細胞を取り囲んでいた。 2.PD-1+MP T細胞のadoptive transfer:PD-1+T細胞を熱可逆性ゼラチンポリマーに溶解し、エコーガイド下に通常食飼育6週齢レシピエントマウスのVATに直接的に注入した。細胞移植群では対照群と比べ、VATにおけるマクロファージ数は有意に増加し、その極性はM1優位であった。細胞移植群ではVATに王冠様構造が出現し、耐糖能異常とインスリン抵抗性が確認された。 3.PD-1+MP T細胞の性状解析:PD-1-CD4+T細胞と比べPD-1+CD4+T細胞では、TCR刺激下の増殖能は有意に低かった。PD-1+CD4+T 細胞は、TCR刺激下のリンパ球性サイトカイン(IL-2やIFNγ)分泌能は低いが、炎症性サイトカイン(オステオポンチンやIL-6)分泌能は高かった。PD-1+CD4+T細胞ではsatb1の発現が低く、C/EBPαの発現が高かった。PD-1+MP T細胞は高率にp21WAF1/CIP1を発現し、H2AX(pS139)の発現レベルも高かった。 4.T細胞におけるPD-1発現誘導実験:VAT組織とPD-1-T細胞との共培養では、PD-1の誘導を観察できなかった。一方、PD-1-T細胞を食事性肥満マウスVAT由来脂肪組織マクロファージと共培養すると、PD-1の発現が観察された。HFD負荷時にクロドロネートリポゾーム治療によりマクロファージを除去すると、VATにおけるPD-1+T細胞の発現は、PBS投与群と比べ有意に減少した。 5.ヒトにおける循環血中PD-1+T細胞出現率と糖尿病の関連:糖尿病患者では非糖尿病患者と比べ、末梢血液中のPD-1+CD4+T細胞の割合が有意に増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英語論文を投稿したところ、再査読まで回ったものの最終的に不採択となった。そのため再査読対策の追加研究に追われ、本実験の進行に遅れが生じた。また平成26年度中に所属施設の異動があったため、研究に取り組む時間が減少した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画レベルでの研究はほぼ終了しているため、平成27年度中の英語論文発表を達成したい。その上で、本研究の成果をふまえたより実用的な抗体治療法の開発や、PD-1よりも老化関連T細胞に特徴的な表面マーカーの検索といった新たなステージの研究準備に取り掛かりたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に慶應義塾大学より兵庫医科大学への異動があったため、実験に取り組む時間が減少した。現在、兵庫医科大学においても継続的な実験が行える環境整備を行っており、そのため次年度への繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
英語論文の作成、査読者からの指摘に回答するための追加実験の実施、論文の発表費用(学会での発表、論文印刷代)に使用する計画である。
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