研究課題
【背景】免疫系の老化は「免疫老化」と呼ばれ、老化関連疾患と密接に関与している。糖尿病は老化関連疾患の一つである一方、糖尿病状態は個体の老化を促進しているとも推測されている。本研究では、加齢に伴い増加するProgrammed death-1(PD-1)陽性記憶型CD4陽性T細胞(以下、老化関連T細胞)がインスリン抵抗性の発症に関与していること、インスリン抵抗性が老化関連T細胞を誘導し個体の老化を加速している可能性を検討することを目的とした。【方法と結果】1.100週齢の加齢マウスでは若齢マウスに比べ耐糖能は低下し、インスリン抵抗性は増大した。加齢マウスでは脾臓細胞のみならず、脂肪組織でも老化関連T細胞の割合の増加を認めた。2.高脂肪食負荷肥満マウスにおいて、インスリン抵抗性の出現を確認した。その経過における脂肪組織の老化関連T細胞及びマクロファージ、制御性T細胞、好酸球、好中球、B細胞の出現様式をFACSを用いて解析したところ、脂肪食開始早期から老化関連T細胞の増加を認め、その増加はM1タイプマクロファージの増加に先行していた。3.加齢マウス、高脂肪食負荷肥満マウスに抗PD-1抗体を投与し老化関連T細胞を約ー40%除去した。抗体治療によりいずれの群でもインスリン抵抗性は改善し、マクロファージのM1からM2への極性の変化と制御性T細胞の増加を認めた。4.非肥満マウスの脂肪細胞にPD-1陽性T細胞を養子移植することにより、脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性が誘導された。5.脂肪組織における老化関連T細胞誘導は、B細胞依存的であった。【結論】加齢マウスと同様に、高脂肪食負荷肥満マウスでも老化関連T細胞が脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性を惹起していた。老化関連T細胞に介入することが、加齢や肥満に関連した慢性炎症に対する新しい治療戦略となる可能性が明らかになった。
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