研究課題
基盤研究(C)
我々は、これまで健常人に加えて数種類の遺伝性不整脈患者のiPS細胞を樹立してきた。特に遺伝性QT延長症候群は、全体の約7割をI型、II型、III型が占めるがこれらすべての症例についてiPS細胞を作成済みである。さらに、VII型QT延長症候群や特発性心室頻拍などの特殊な不整脈についても作成済みである。今後、これらのiPS細胞を心筋細胞に分化し機能解析を行う予定である。一方、来年度以降に予定している遺伝性不整脈の薬物治療開発の予備実験を開始した。抗不整脈薬は、チャネルに直接作用しその電気生理学的特性を変化させる。一方、抗不整脈薬の中にはチャネルへの直接作用だけでなく、チャネルの膜へのトラフィッキングやユビキチン化などの翻訳後修飾の効果も有しているものがある。つまり、抗不整脈薬によるチャネルへの直接作用が急性期効果となるのに対し、チャネル発現を修飾することによりイオンチャネルのリモデリングを調節するなどの慢性期効果が期待できる。そこで、multichannel modulator であるアミオダロン、ベプリジル、キニジンなどの抗不整脈薬をヒトiPS 心筋に投与し、イオンチャネルの発現量をmRNAレベルで検討中である。現在、各薬剤の使用する最適な濃度の調整を行っている。予備実験では、ベプリジルがNaチャネルαサブユニットのmRNA発現を修飾するという結果を得ているが今後さらなる検討が必要である。
3: やや遅れている
iPS細胞の心筋細胞への分化誘導が安定せず、細胞作製が思うように進まなかった。mRNAのPCR解析にはまとまった細胞が必要であり、細胞培養に時間がかかり機能解析が十分に行えなかったことが原因と思われる。
引き続き、新規遺伝性不整脈のiPS細胞作製を行う。さらに、薬剤によるイオンチャネル遺伝子発現を検討し、チャネル遺伝子のリモデリング作用が期待できる薬剤を同定する。同定した薬剤が、疾患iPS由来心筋細胞にも同様に作用するか確認し臨床応用への可能性を検討する。
研究が予定より遅れ、本来購入予定であった抗体や試薬を購入しなかったため。また当該年度にPC機器を購入予定であったが、研究室の改修のため設置場所が確保できなくなり未購入であったため。PC機器の購入を行い、研究進捗状況に合わせて試薬などの消耗品を購入する。
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