研究実績の概要 |
本年は、抗不整脈薬のイオンチャネルに対する効果を検討した。抗不整脈薬はチャネルの様々な部位に直接作用することによりチャネルの電気生理学的特性を変化させその効果を発揮するが、抗不整脈薬の中にはチャネルに対する直接作用だけでなく、チャネル遺伝子発現、翻訳後修飾などを調節することによる慢性効果を有するのではないかと考えられるものがある。特にアミオダロンやベプリジルは、Na+チャネル、Ca2+チャネル、遅延整流K+電流(IKs, IKr)、ATP感受性K+電流など多くのチャネルの電気生理学的特性を修飾することが知られている一方で不整脈によるイオンチャネルのリモデリングを抑制する効果を有していることが知られている。そこで、ヒトiPS心筋細胞にこれらの薬剤を投与することにより、イオンチャネル遺伝子発現がどのように変化しうるかを検討した。ES細胞と同様な多能性、分化増殖能を備えていることを確認済したヒトiPS細胞株を用いて実験を行った。未分化iPS細胞、アミオダロンおよびベプリジル1μM, 10μMおよびDMSOを一週間投与したEBからmRNAを抽出し、QT-PCRを施行した。解析遺伝子は、SCN5A, CACNA1, KCNJ2, KCNQ1, CACNA1G, HCN4, Nkx2.5, GAPDHとし、GAPDH発現量との比率で比較検討した。結果、未分化iPS群においてSCN5A, CACNA1G, HCN4は既に発現していた。アミオダロン投与群では、ヒトiPS心筋細胞が脆弱となり十分なmRNAの採取が困難であった。一方、ベプリジル投与群では、SCN5A, CACNA1, CACNA1G, HCN4の発現量はベプリジルの濃度依存的にDMSO群と比較し増加した。
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