研究課題/領域番号 |
25461119
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中野 敦 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 室長 (90648106)
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研究分担者 |
北風 政史 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 部長 (20294069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / 細胞極性 / 分子生物学 |
研究概要 |
低酸素や低血糖などの細胞ストレス状態によって細胞内AMP濃度は上昇するが,これを検知して活性化されるリン酸化酵素AMPKが,微小管の伸長端に結合して微小管伸長調節を司っているタンパク質CLIP-170をリン酸化し,培養細胞の極性や遊走を維持していることを我々は特定してきた。本研究では,上記メカニズムが培養細胞のみならず生体内でも認められるか否かについて,その分子機構とともに解明することを目的とする。心筋梗塞や心筋虚血の病変部では,低酸素状態による心筋細胞傷害によって一時的に極性を失った残存心筋細胞の再構築(再極性化)が起こることが知られており,今回は心臓をモデルとして研究を行う。生体内での観察には,拍動心臓を直視下にて観察でき,遺伝子操作技術が確立されつつあり,モデル動物の中でも成育が早いゼブラフィッシュを使用して,以下の項目について検討する。 1.ゼブラフィッシュの心臓におけるAMPKとCLIP-170分子の発現を確認するために,AMPKとCLIP-170の遺伝子発現状態を検討する。 2.AMPKによるCLIP-170のリン酸化の役割を明らかにするために,リン酸化を受けないCLIP-170をゼブラフィッシュの心臓にのみ発現させて心臓の形態変化を検討する。 3.マウスにおける現在までの検討では,全身のAMPKの発現を完全に抑制すると出生前の胎生期に死亡することがわかっている。そこで,受精後すぐに生きたまま観察が可能なゼブラフィッシュの遺伝子の働きを完全に抑制する方法を確立して,心臓におけるAMPKの発現を抑制することで,現在までマウスにて観察できなかった心臓の形態変化や機能を検討する。 これらの研究を通して,低酸素状態を含めた細胞ストレスに対する心筋細胞極性に関わる応答反応のメカニズムを解明し,虚血性心疾患治療の基盤となることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AMPKによってリン酸化を受けないCLIP-170変異体を培養細胞に発現させると、微小管の伸長が阻害されて細胞極性が傷害さる。そこで、ゼブラフィッシュの稚魚から採取したRNAを用いて作成したDNAライブラリーから、CLIP-170のcDNAを単離してAMPKによるリン酸化部位であるセリン311をアラニンに置換したリン酸化を受けないCLIP-170変異体を作成した。これを、ゼブラフィッシュの心臓特異的に発現させるために,酵母転写調節因子Gal4と、Gal4の認識配列であるUAS(upstream activator sequence)を用いた発現システムを利用して,変異CLIP-170を心臓特異的に発現させた。心臓前駆細胞が心臓原基を形成する受精12時間後頃から変異CLIP-170が発現していたが,変異のないCLIP-170が発現している個体と比較して,変異CLIP-170が発現している個体にて心臓のループ形成異常が有意に多く認められた。
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今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュの心臓におけるAMPKとCLIP-170分子の発現を発生の各段階において確認するために,プローブを作成してWISH(whole mount in situ hybridization)を行う。また,変異CLIP-170を心臓にてより特異的に発現させるために,心臓特異的プロモーターを使用した発現系を作成する。さらに,近年その発展が著しい遺伝子編集技術を用いて,ゼブラフィッシュの心臓特異的にAMPKの発現を抑制して,その機能解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,計画していた実験の順序が替わったために予定していた予算が未執行となった。 平成26年度は、予定予算を執行予定である。
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