研究課題/領域番号 |
25461120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構北海道医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
金子 壮朗 独立行政法人国立病院機構北海道医療センター(臨床研究部), 統括診療部内科系診療部, 循環器内科医長 (90455634)
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研究分担者 |
筒井 裕之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70264017)
石森 直樹 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70399848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 循環器 / 分子生物学 / 動脈硬化 / 不安定プラーク / 凝固線溶系 / 出血 / 炎症細胞浸潤 / 細胞外マトリクス |
研究概要 |
PAI-1はAngiotensin(Ang)IIが強く作用する動脈硬化巣での血管周囲への出血や炎症細胞浸潤を抑制することで動脈硬化進展におけるプラーク破綻を抑制すると考えられる。本研究はAngIIの関与する動脈硬化進展においてPAI-1のプラーク安定化作用を証明し、その機序を解明することで不安定プラーク破綻による急性冠動脈疾患を予防する為の新たな治療法を確立することを目的とする。PAI-1は血管内での線溶系抑制因子としての作用の他に、AngIIが強く作用する冠動脈血管壁での血管内皮細胞の維持及び血管壁基底膜を構成する細胞外マトリクスの維持に保護的な作用を発揮していることが以下の研究成果で明らかとなった。 1)PAI-1KOマウスに浸透圧ポンプでAngIIを投与すると、冠動脈破綻を高率に起こし、冠動脈壁の毛細血管周囲に出血を認め、心筋間質に炎症細胞浸潤を引き起こした。また大動脈弁周囲組織にも著しい出血を伴う炎症細胞浸潤を認め、時間経過と共に大動脈弁の線維化と班痕形成を認めた。 2)一方正常マウスではAngII投与により冠動脈壁の出血や心筋間質への炎症細胞浸潤は極限られたものであり、大動脈弁周辺の変化も軽度であった。 以上からPAI-1は血管周囲への出血や炎症細胞浸潤を抑制することで動脈硬化進展におけるプラーク破綻を抑制することが示唆された。 3)正常マウス及びPAI-1KOマウスにAngIIを投与し、心筋細胞を採取しMMP 活性をzymographyで測定した。PAI-1KOマウスにAngIIを投与したモデルでは、正常マウスと比較しMMP活性が有意に増加していた。以上よりPAI-1を発現するマウスではMMP活性の抑制が血管内皮の保護に関与し、血管壁基底膜を安定化させ、出血や炎症細胞浸潤を抑制し不安定プラーク破綻の抑制に強く関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度(平成25年度)科学研究助成許可となった時点で、本研究の研究代表者が所属研究機関の異動を余儀なくされ、本研究に関わるマウスの維持管理が困難となり前施設の研究分担者所属の職員に協力して頂かなければならない状況となった。この様な状況下でマウスコロニーの維持、繁殖が進まず実験に必要なマウスを確保することが難しくなり、当初目標としていた研究の進行が遅れる状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
PAI-1発現は不安定プラーク破綻に抑制的に作用していると考えられるが、このメカニズム解明のため以下の研究を行う予定である。 正常マウスとPAI-1KOマウスを比較し凝固線溶系との関係を考察するため、AngII投与後の各時相でのPAI-1,uPA,Plasminogen-plasminの蛋白定量を行い、MMP活性(MMP-2,MMP-9)との関係を明らかにする。更に血管基底膜に存在する細胞外マトリクス(laminin)の分解程度を組織学的に比較検討する。PAI-1TG(transgenic)マウスについても系統維持しコロニー回復後に同様の実験を行う。また、好中球やマクロファージ等の炎症細胞浸潤との関係を明らかにするため、大動脈弁、冠動脈周囲組織への炎症細胞浸潤及び出血の程度を定量化し比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスコロニー系統維持の遅延のため当初の研究計画に遅れがあり次年度使用額が生じた。 サンプル解析、マウス系統管理・飼育料、物品購入、学会出席等の研究諸経費に使用する。
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