研究実績の概要 |
腎不全患者の主な死因は心血管疾患であり「心腎連関」として病態解明と治療法の開発が望まれている。我々はマウス腎機能障害合併心血管疾患(心腎連関)モデルの開発に初めて成功した。本研究では、腎機能障害が循環器疾患にどのように影響するかを、新しい心腎連関動物実験モデルを用いて検討し病態を解明することが目的である。 研究期間中に、腎不全状態が心筋梗塞および心不全に対してどのように影響しているかを解明するため、5/6腎臓摘出モデルに心筋梗塞を発症させ、アンジオテンシンII受容体阻害剤(ARB)による治療効果について検討を進めた。この実験モデルは、無治療では13%しか生存しないのに対し、ARB治療により生存率が28%まで改善する事を明らかにした。その機序としてARBがどのように影響しているかを解析したところ、血圧などの生理学的因子や腎機能の改善は影響していなかった。しかし、心筋梗塞後の心機能が著しく改善されており、ARBが腎不全における心不全の発症を抑制出来る事が明らかとなった。病理学的に検討したところ、無治療では、残存心筋細胞の肥大、炎症細胞浸潤、コラーゲン蓄積が増悪していたのに対し、ARB治療によりこれらの変化は著しく抑制されている事が解明された。これらの結果より、レニンアンジオテンシン系が腎不全状態における心筋虚血および心不全の増悪に影響していることが明らかとなり、より特異的な治療法の開発が期待されることが明らかとなった。 本結果は、Hypertension Reserach誌に掲載された。 Watanabe R, Suzuki J (corresponding author), Wakayama K, Kumagai H, Ikeda Y, Akazawa H, Komuro I, Isobe M. Angiotensin II receptor blocker irbesartan attenuates cardiac dysfunction induced by myocardial infarction in the presence of renal failure. Hypertens Res. 2015 Dec 10. doi: 10.1038/hr.2015.141. [Epub ahead of print]
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