研究課題/領域番号 |
25461125
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
岡本 貴行 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30378286)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管新生 / ギャップ結合 / コネキシン / 血管リモデリング |
研究実績の概要 |
・研究の内容 動脈硬化症や高血圧症などの血管病の基盤には血管内皮機能障害と病的血管リモデリングが存在し、その調節の分子機構の解明は各種血管病の予防と治療法の開発には有益である。血管新生は生理的な血管の発生、分化、成熟をはじめ、腫瘍や動脈硬化巣の病態形成に重要である。本研究では、血管内皮細胞間ギャップ結合に着目し、その構成蛋白質であるコネキシン(Cx)が血管新生に及ぼす影響を解析した。 ・研究の成果 血管内皮細胞にはCx32、Cx37、Cx40、Cx43が代表的なCx分子として発現している。これらCx分子が血管リモデリングに及ぼす影響を解析するため、Cx32、またはCx43遺伝子を強制発現する内皮細胞株を樹立し、in vitro創傷治癒モデルを用いて評価した。培養した細胞の一部を剥離し、細胞の浸潤、増殖による剥離部の回復を解析した。その結果、コントロール群と比較してCx32強制発現細胞では創傷治癒が促進し、Cx43強制発現細胞では遅延した。また、Cx32、Cx43に対する抗体を用いて同様の検討を行ったところ、Cx32抗体は創傷治癒を抑制し、Cx43が促進することを示し、強制発現細胞での実験結果を支持する結果を得た。創傷治癒の速度は細胞増殖と細胞の遊走能に起因する。各細胞の増殖能には顕著な差がみられなかったことから、Cx遺伝子により細胞の遊走能が変化し、創傷治癒が制御されている可能性が示唆された。 ・研究の意義および重要性 ギャップ結合は血管機能の維持に重要である。しかし、Cx分子が血管透過性、創傷治癒、血管新生、血管成熟に及ぼす影響は明らかではなく、本結果は血管リモデリングにおけるCx32とCx43の役割を明らかにした。今後は、その分子機構をはじめ、がんや虚血再灌流など病態に伴う血管新生への影響を明らかにすることで新たな知見を得られると期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、血管内皮細胞に発現するCx32、Cx43が血管リモデリングに関わる創傷治癒における役割を解析した。昨年度までの研究により、マトリゲル上での管腔形成を利用した血管新生モデルで得られた結果をもとに平成26年度では、創傷治癒に注力して研究に取り組んだ。 各種Cx遺伝子導入細胞の作製、創傷治癒モデルを用いた実験系の構築が順調に進行できたことでスムーズに研究を進めることができた。当初の計画を若干変更し、本年度では創傷治癒に特化した研究を行うことで一部の研究は計画していた以上に進行することができた。さらに本年度に行った分子機構を調べる前実験の結果から、予想をしていなかった新たな知見を得つつある。 本研究を行うにあたり、特定の領域に集中したこと、及びその分野に関わる新たな取り組みに積極的に挑戦したことで、概ね順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はないが、本年度で得られた新たな知見をもとに今後の研究内容に一部追加や修正を加えることで本課題を達成できると考えている。そのため、今後は血管新生、血管リモデリングだけでなく、これらに関わる新たな分野にも挑戦することで最終年度には当初研究を達成するとともにその発展を進めたいと考えている。 また、本研究課題の結果はギャップ結合が血管の形成やリモデリングを調節することを示すものである。血管新生やリモデリングはがんをはじめ多くの疾患の病態形成や障害組織の治癒に大きく関わる現象である。そのため、ギャップ結合を標的とした血管治療の各種血管病治療への有効性、また診断や予防への応用を試みる予定である。さらにはこれら応用を実現するのための問題点の抽出とその具体的な解決法を見出し、将来的にトランスレーショナルリサーチへの発展を考慮したいと考えている。
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