研究実績の概要 |
・研究の内容 生活習慣病などでは慢性的な炎症と血液凝固の活性化を伴う血管内皮機能障害と病的な血管リモデリングが起こり、動脈硬化、高血圧、各種動静脈血栓症など血管病の基盤になると考えられる。これまでに我々は血管内皮細胞間ギャップ結合の異常が炎症や血液凝固を病的に活性化することを示してきた。本研究では、血管リモデリング、特に血管新生に着目して血管新生の調節や血管の病態生理におけるギャップ結合構成分子の役割の解明を目的とする。 ・研究の成果 血管内皮細胞にはギャップ結合構成蛋白質であるコネキシン(Cx)32, Cx37, Cx40, Cx43が発現し、これら遺伝子を強制発現した血管内皮細胞株を樹立した。また、抗体を用いて各遺伝子を阻害した細胞を作成した。これら細胞を用いて血管新生モデルであるマトリゲル管腔形成、創傷治癒を評価した結果、Cx32は血管新生を正に制御し、Cx43は負に制御することを明らかにした。さらには、Cx32欠損マウスから大動脈を摘出し、in vitroで培養することで血管の発芽を評価した。その結果、Cx32欠損マウスでは血管の発芽や伸長が抑制された。 ・研究の意義および重要性 ギャップ結合は血管内皮の機能と構造の維持に重要である。しかし、血管内皮は複数のCx遺伝子を発現し、個々の遺伝子が血管の炎症や血液凝固、血管リモデリングなどの現象に対してどのような役割を有しているかは明らかでない。本研究では血管新生におけるCx32、Cx43の新しい役割を示した。今後は、その分子機構や動脈硬化、がん、虚血再還流など病態に伴う血管新生への影響を明らかにすることで、これまでにない新たな治療戦略が提示できると期待する。
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