研究課題/領域番号 |
25461127
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
勝谷 友宏 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (30311757)
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研究分担者 |
中神 啓徳 大阪大学, その他の研究科, 寄附講座教授 (20325369)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ワクチン / アンジオテンシンII / レニン / 高血圧症 |
研究概要 |
1)アンジオテンシンII DNAワクチンの長期的な安全性・有効性の評価 アンジオテンシンII DNAワクチンをSHRに投与し、無投与群と共に長期観察を行った。生存率を比較したところ、ワクチン群で寿命の延長傾向が認められた。一部の個体は投与半年後に解剖し、心臓、腎臓の組織解析を行った。その結果ワクチン群のHE染色で病理学的所見を認めず、心臓のマッソントリクローム染色で血管周囲の線維化の抑制傾向が認められた。以上よりアンジオテンシンII DNAワクチンの投与は長期的な影響として、免疫反応による有害な作用が認められないこと、降圧に伴う臓器保護効果が認められることが明らかとなりつつある。 2)レニンを標的としたDNAワクチンの作成 安全性の高いレニンワクチンを作製するため、T細胞の活性化能が無いと想定される小さなレニンエピトープを選択した。これにT細胞活性化配列を付与し、抗原提示能を高めるため、自己集合して球状になる性質を有するHepatitis B core (HBc)を用いることとし、レニンエピトープをHBcのA80-S81に挿入したかたちで発現させるベクターを作製した。ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションし、この細胞抽出液に対し抗HBc抗体および抗レニン抗体でウエスタンブロットを行った。その結果、作製したベクターがHBcとレニンエピトープの融合蛋白(HBc-Renin)を正しく発現することが確認できた。レニン全長DNAワクチンも作製した。 針なし注射器を用いてHBc-ReninベクターをSHRの背部に2週間隔で3回投与した。初回投与4週後、8週後の血清を採取しELISAを行った結果、ワクチン群で抗レニン抗体価の上昇を認めた。以上より、抗レニン抗体産生能のあるレニンDNAワクチンを作製することができ、エピトープワクチンの安全性に関する詳細な検討を行うための準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンジオテンシンII DNAワクチンの長期的な安全性および有効性を示すデータが得られつつある。またレニンを標的としたDNAワクチンのベクター作成は早期に達成し、引き続いて動物モデルでの抗レニン抗体産生の評価を行うことができた。レニンDNAワクチンの投与により、計画通り抗レニン抗体価の有意な上昇を認めた。以上よりおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
レニンの全長を免疫すると、有害な自己免疫反応が生じることが過去の報告から予想される。しかしレニン配列のうち、B細胞エピトープとなる一部分の配列のみを免疫すると、レニン抗体産生による降圧のみが得られ、有害なT細胞性自己免疫反応は生じないであろうと想定される。この仮説を実証することで、エピトープワクチンの安全性に関する理解を深め、より安全で有効なワクチンの作製に資することが本研究の目的の一部である。 そこでまず、作製したレニンエピトープDNAワクチンにより、高血圧ラットで降圧効果が得られることを確認する。また、投与中止後の降圧効果と抗体価の持続期間を確認する。またELISPOTアッセイにより、ワクチン投与群で組み換えレニンに対する細胞障害性T細胞応答が起こらないことを確認することで、エピトープワクチンの優位性を確認する。 これらの解析が終了した後に、本ワクチンにより免疫が樹立される機序、ワクチンの抗体価がより強く、長く維持される機構についての検討を行う。
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