研究課題/領域番号 |
25461128
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
力武 良行 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50419488)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞接着分子 / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / 運動 / 増殖 / シグナル伝達 |
研究概要 |
細胞接着分子Necl-4とNecl-5の生理的・病態生理的機能を解析した。まず、動脈硬化の初期病変である内膜肥厚形成におけるNecl-5の機能を解析した。Necl-5はマウス総頸動脈結紮後の肥厚した新生内膜の平滑筋細胞で発現が増加しており、Necl-5ノックアウトマウスでは内膜肥厚の形成が減弱し、血管壁でのDNA合成も減少していた。Necl-5ノックアウトマウス大動脈の初代培養平滑筋細胞では、野生型マウス平滑筋細胞と比べて、MAPキナーゼの活性化が抑制されており、血管平滑筋細胞の収縮型マーカー分子の発現が増加して合成型マーカー分子の発現が減少し、細胞の運動と増殖が減弱していた。以上の結果より、Necl-5は収縮型から合成型への脱分化を促進することにより、平滑筋細胞の運動と増殖を促進して、総頸動脈結紮後の内膜肥厚を促進することが明らかになった。次に、血管内皮細胞におけるNecl-4の機能を解析した。Necl-4は血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体と細胞外領域を介して結合した。VEGFに応答して運動しているヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)では、Necl-4は運動先導端に集積した。siRNAによりNecl-4をノックダウンすると、ROCKが活性化され、VEGFに応答した細胞運動やマトリゲル上でのネットワーク形成、Rac1の活性化は抑制された。Necl-4ノックダウンによる細胞運動やネットワーク形成、Rac1の活性化の抑制はROCK阻害剤により回復した。また、Necl-4ノックダウンによるROCKの活性化は、Necl-4と結合するPTPN13をノックダウンすることにより抑制され、これに伴い、運動やネットワーク形成、Rac1の活性化の抑制も回復した。以上の結果より、Necl-4はPTPN13によるROCKの活性化を阻害することにより、VEGFに応答したRac1の活性化を促進して、細胞運動やマトリゲル上でのネットワーク形成を促進することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に実施計画していた『内膜肥厚形成におけるNecl-5の機能』についてはすでにその成果を論文発表することができた。さらに、『血管内皮細胞におけるNecl-4の機能』については数回学会発表することができ、論文投稿準備中である。『粥状動脈硬化形成におけるNecl-5の機能』を検討するため、現在、Necl-5ノックアウトマウスとLDL受容体ノックアウトマウスを交配してダブルノックアウトマウスを作成中であり、まだ解析には至っていないが、代わって、当初、次年度以降に予定していた『FAM5Cの機能と作用機構』についても、解析が進み、学会発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
『血管内皮細胞におけるNecl-4の機能』については、論文投稿の準備をしながら、不足しているデータについて解析を進める。投稿後のリバイスに対応するために実験を行う予定である。『FAM5Cの機能と作用機構』についても、さらに解析を進めて、新規データを得て、最終的に得られた知見をまとめて論文投稿する予定である。これらと並行して、『粥状動脈硬化形成におけるNecl-5の機能』を検討するため、Necl-5:LDL受容体ダブルノックアウトマウスが作成でき次第、8-12週間高脂肪食負荷を与え、粥状動脈硬化巣の形成を組織染色により評価するとともに、血管内皮における単球接着分子の発現や動脈硬化病変へのマクロファージの浸潤を免疫染色により評価する。さらに、real time-PCR法、ウエスタンブロット法により、Necl-5:LDL受容体ダブルノックアウトマウスの表現型を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Necl-5:LDLRダブルノックアウトマウスの作成が当初の計画より遅れているために、予定より使用額が減じた。 昨年度よりの繰越金は、Necl-5:LDLRダブルノックアウトマウスの解析に必要な物品費に充足する。
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