研究課題/領域番号 |
25461129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川合 宏哉 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (20346266)
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研究分担者 |
石田 達郎 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (00379413)
杜 隆嗣 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50379418)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 循環器 / 血管新生 / 接着分子 |
研究概要 |
JCAD (junctional protein associated with coronary artery disease)(旧名KIAA1462)は、ヒトゲノムワイド関連研究において冠動脈疾患と強い相関を示すことが報告された細胞接着制御因子の一つである。JCADは、血管内皮細胞に特異的に高発現し、細胞間接着装置の中でも特にadherens junctionに局在することが報告されている。しかし、JCADの血管内皮機能に与える影響は不明である。本研究では、JCADが血管内皮細胞機能を修飾することにより心血管病の発症と進展における役割を検討した。 1. JCAD発現抑制による血管内皮細胞機能の検討: ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に、siRNA法を用いたJCAD発現抑制(ノックダウン)を行い、細胞機能に与えるJCADの影響を検証した。まず、HUVECにおいてウェスタン法によりJCADノックダウンが確認できた。JCADノックダウンされたHUVECは、細胞増殖能が低下していた。また、マトリゲルをコートした培養ディッシュ上でのin vitroの管腔形成能も低下していた。さらに、細胞遊走能力が低下していた。以上より、JCADは内皮細胞の増殖、遊走、管腔形成に関与していることが示され、生体内では血管新生や動脈硬化などに関与することが示唆された。 2. 生体内でのJCAD発現抑制による血管新生の検討: 上述の細胞実験の結果を踏まえ、JCADノックアウトマウスの背部にマトリゲルを皮下注し、マトリゲルに侵入してくる血管内皮細胞とマトリゲル内のヘモグロビン含有量を定量化することにより血管新生を評価したところ、対照マウスに比べて血管新生が抑制される傾向が観察された。今後、nを増やして生理的および病的な血管新生における役割を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子改変マウスにおいて心血管機能を解析するには、C57BL/Lマウスと5回以上の交叉交配を行うことが必要不可欠とされている。我々はJCADノックアウトマウスを作製したが、これまでC57BL/Lマウスとの交叉交配に相応の時間がかかった。現時点で、7回の交叉交配が終了しており、動物実験にむけてマウスを繁殖されられる時期になっている。今後、JCADノックアウトマウスにおいて種々の心血管系の疾患モデルを作製し、JCADの生体内での機能が明らかにされることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行なった培養細胞を用いた研究成果より、 JCADは血管新生を制御していることが示唆されたため、当面は血管新生が主な表現型となるような疾患モデルの作製実験を優先することとした。 1. JCADノックアウトマウスを用いた病的血管新生の解析:JCADノックアウトマウスおよび野生型マウスの皮下にB16F10メラノーマ細胞を接種する。2週間、腫瘍のサイズを定量化した後に、腫瘍を摘出し、腫瘍内血管密度を免疫組織学的に評価する。また、JCADが血管新生を制御する機序、カドヘリンとの相互作用などを培養細胞を用いて明らかにする。 2. JCAD/apoEダブルノックアウトマウスを用いた動脈硬化病巣の解析:粥状硬化の進展は粥腫の血管新生に依存すると報告されていることから、高脂血症/動脈硬化モデルであるapoE欠損マウスとJCAD欠損マウスを交差交配し、JCAD/apoEダブル欠損マウスを作製する。得られたマウスを正常食または高脂肪食で16週間飼育した後、大動脈粥状硬化病変の程度をOil red O染色にて比較検討する。また、動脈硬化病巣におけるマクロファージやの含有量を比較検討するとともに、動脈硬化病巣の構成成分について詳細な組織学的観察を行う。
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