研究課題/領域番号 |
25461130
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉栖 正生 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 教授 (20282626)
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研究分担者 |
小久保 博樹 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 講師 (10270480)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 大動脈瘤 / エイコサペンタエン酸 |
研究概要 |
動脈硬化と密接に関連するOpg KOマウス・腹部大動脈瘤モデルを用いて、動脈硬化の治療薬であるエイコサペンタエン酸(EPA)の効果を検討することによって、動脈硬化の分子機序に基づいた腹部大動脈瘤形成の分子機構を明らかにすることを目的として研究を進めている。本年度は、Opgの大動脈瘤形成に於ける抑制効果をもたらすシグナル系の同定と、そのメカニズムの解析をおこなった。 これまでに、塩化カルシウ局所投与によるOpg KOマウス・腹部大動脈瘤病態モデルにおいて、時間経過を追った組織学的な解析を行った。塩化カルシウム局所投与後一週間までに、野生型およびOpg KOマウスいずれにおいても、腹部大動脈瘤の形成を認めた。 その後、野生型では回復傾向が見られたが、Opg KOマウスでは、動脈瘤病態が悪化することが明らかとなった。この観察から、塩化カルシウム局所投与による腹部大動脈瘤形成過程には、1週間程度までの急性期、一週間以降の回復期があることが推測された。野生型マウスでは弾性線維の崩壊は認められないが、Opg KOマウスは、塩化カルシウム局所投与後一週間頃から、中膜の弾性線維が崩壊していくことが明らかとなった。 また、塩化カルシウム局所投与によって血管平滑筋細胞の遊走が野生型でも認められるが、一週間頃までにマクロファージが浸潤してくると共に、血管平滑筋細胞は消失していく。それに対し、Opg KOマウスでは、マクロファージが浸潤しても、血管平滑筋細胞が残存することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩化カルシウム局所投与による腹部大動脈瘤病態モデルにおいて中膜の弾性線維の崩壊がいつどのように起るのか、いつマクロファージが浸潤するのか、石灰化はいつから起こるのかなど、腹部大動脈瘤病態の経時的変化を明らかにするための大動脈瘤形成の時間経過を追った組織学的な解析は順調に進んでいる。 また、液性因子Opgを介した抑制メカニズムの解析を進めるなかで、大動脈瘤形成に関わる新たな因子を同定した。その因子は、血管平滑筋細胞に発現し、Mmp9を活性化することによって中膜を構成するエラスチン線維の分解を亢進させる。一方、Opgは、その因子に結合して、その作用を抑制することにより、大動脈瘤形成に対して抑制的に働く可能性が見いだされた。 このように、最初に掲げた目標を、順調に達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Opg欠損よる大動脈瘤形成に対する増悪効果を、EPAの事前食餌によって抑制させる効果の分子機構を詳細に解析する。 まず、第一に、塩化カルシウム局所投与によるOpg KOマウス・腹部大動脈瘤病態モデルにおいて、時間経過を追った組織学的な解析を行う。すでにEPAの事前食餌によって、塩化カルシウム局所投与後6週間で、Opg KOマウスにおける増悪効果が抑制され、野生型とほぼ同様の動脈瘤形成にとどまる予備的結果を得ている。Opg KOマウスにおける増悪効果に対する抑制効果が、初めから動脈瘤の形成を抑制するためなのか、それとも一旦形成された動脈瘤を回復させる効果が増大するためなのかを明らかにする。 次に、EPA投与によるOpg欠損によるAAA増悪効果を抑制するメカニズムに迫る。EPAはω3脂肪酸であることから、代謝産物であるプロスタグランジン(PG)E3やレゾルビン E3(RvE3)などの生理活性物質による制御と、ω3脂肪酸に直接結合する受容体からのシグナル伝達系による制御を考える必要がある。まず、生理活性物質のいずれかが、Opg欠損によるAAA増悪効果を抑制するかどうかを検討するために、MMP9などの遺伝子の活性化に対して、PGE3やRvE3などの生理活性物質の添加が抑制効果をもつのかどうかを検討する。 EPAが代謝産物を介さずに直接的な抑制効果を持つ場合、もしくは転写活性に対する抑制効果が明らかになった場合、ω3脂肪酸の受容体もしくは生理活性物質の受容体からのシグナル伝達系と遺伝子発現の制御との関連をさらに追及していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
少額のため、次年度で使用する。 次年度で研究費として使用する。
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