研究課題/領域番号 |
25461134
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
黒田 淳哉 九州大学, 大学病院, 助教 (70614858)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳血管周皮細胞 / Nox4 / 活性酸素 / 脳虚血 / 脳梗塞 / 血液脳関門 / 脳浮腫 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
脳血管周皮細胞は、脳機能の遂行に必要なNeurovascular Unitの構成細胞であり、脳虚血において重要な役割を担っていることが明らかとなっている。我々は、周皮細胞の活性酸素生成酵素Nox4に着目して脳虚血病態の研究を行っている。 平成25年度から取り組んできた内容であるが、脳血管周皮細胞のNox4は、血液脳関門の破綻および脳梗塞巣の拡大を引き起こし、脳梗塞急性期には有害な作用を及ぼすことをSM22αプロモーターを用いたNox4トランスジェニックマウスを用いて再確認し、NFκBおよびMMP9の活性化がその機序として重要であることを論文として報告した。加えて、周皮細胞機能と密接に関連するPDGFRβの発現が脳梗塞後に増強することについて、basic FGFが関与している可能性についても論文発表した。 我々は前年度に、脳梗塞巣内部が、周皮細胞由来細胞の増殖によるものと思われるPDGFRβ陽性細胞によって占められることを見いだしているが、この反応が脳梗塞後の修復に関与している可能性を示唆する結果を見いだしている。そのメカニズムや病態的意義をさらに明らかにするために、マウス脳梗塞モデルを用いて、脳梗塞後の組織変化や構成細胞の推移を詳細に観察しており、脳梗塞の発症から修復に至る一連の病態の理解に努めている。特に、周皮細胞由来と思われるPDGFRβ陽性細胞においては、活性酸素生成酵素としてのNox4の発現がどのように関与しているか、さらに研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な研究目的として記載した、「①脳虚血が周皮細胞におけるNox4の発現・活性酸素生成活性に及ぼす影響」に関しては、特に虚血の構成要因の一つである低酸素や酸性環境下での影響について、成果をすでに論文発表した。「②Nox4による活性酸素生成が細胞内シグナル伝達に及ぼす影響」に関しては、前年度に見いだしたサイトカイン・ケモカインの発現増加などにつき引き続き解析中である。一方で、当初計画に照らすと不十分な点がある。「③周皮細胞にNox4を過剰発現するマウスを用いた実際の成体レベルの解析」では、Nox4過剰発現マウスが脳梗塞病態に及ぼす影響について、すでに論文として発表した。さらに、当初計画を超えて、脳梗塞巣のPDGFRβ陽性細胞による線維化反応をはじめ、脳梗塞の発症から修復に至る一連の病態の詳細な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
特に脳梗塞巣のPDGFRβ陽性細胞による線維化反応にNox4がいかに関わっているかは、臨床的観点からも大変興味深い課題であるので、引き続き精力的に解析を進めたい。平成28年度が本研究課題の最終年度となるため、課題全体を見渡して、さらに学会発表や論文発表を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに購入した実験試薬や器材を用いることができたことや、実験方法を効率化した結果、当初計画の実験経費をすべて使用するには至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の助成金と合わせて、分子生物学実験試薬、培養関連器材、動物実験関連の消耗品費として、有効に活用させていただきたい。
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