本研究の目的は、申請者らが世界に先駆けて研究開発した独創的なナノ粒子・ドラッグデリバリーシステム(ナノDDS)技術とPPARγアゴニストの融合によって標的細胞選択的PPARγ活性化を達成し、動脈硬化、心筋虚血再灌流、重症虚血肢、血管形成術後再狭窄、肺高血圧症などの難治性心血管病に対する革新的PPARγナノ医療の研究開発を行い臨床橋渡し研究への基盤とすることであった。 1)動脈硬化性プラーク破綻に対する効果 平成27年度は、動脈硬化性プラーク破綻に対するPPARγナノ医薬(ピオグリタゾン封入ナノ粒子)の効果について、Arterioscler Thromb Vasc Biol誌(Impact Factor 6.0)に報告した。動脈硬化性プラーク破綻モデルマウスにおいて、PPARγナノ医薬は炎症性単球/マクロファージの形質を制御する事によりプラークを安定化させた。骨髄由来単球のマクロファージ分化実験系において、ピオグリタゾン封入ナノ粒子が単球の分化過程で作用すると抗炎症性M2マクロファージへの分化を促進することを示し、動脈硬化病変のマクロファージ構成を変化させることによってプラーク安定化が得られると考察した。 2)心筋虚血再灌流傷害 平成27年度は、マウス心筋虚血再灌流モデルにおいて検討を行った。再灌流時にイルベサルタン(PPARγ刺激作用とアンギオテンシン受容体阻害作用を持つ)封入ナノ粒子を静脈内投与し心筋梗塞領域の縮小効果が得られた。ケモカインMCP-1受容体であるCCR2欠損マウスをもちい、イルベサルタン封入ナノ粒子の治療効果は主に心臓に浸潤する単球/マクロファージの抑制(抗炎症効果)を介する事を示した。原著論文を投稿し、修正再投稿中である。
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