研究課題/領域番号 |
25461137
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
林 寿来 愛知医科大学, 医学部, 講師 (30533715)
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研究分担者 |
中川 修 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (40283593) [辞退]
坂部 正英 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00525983) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / シグナル伝達 / G蛋白活性調節因子 / VEGF / 血管新生 |
研究実績の概要 |
G蛋白活性調節因子であるAGS8はラット心不全モデルからクローニングされた分子であり、心臓においては、虚血低酸素が誘導する心筋細胞死の制御に関わっていることが知られている。本研究では血管におけるAGS8の機能解明に取り組んでおり、本年度の研究によってAGS8の内皮細胞における機能解明が進んだ。 臍帯動脈由来(HUAEC)、臍帯静脈由来(HUVEC)、網膜微小血管由来(HRMVEC)の各種培養血管内皮細胞において、siRNAによってAGS8発現をノックダウンすると、血管内皮増殖因子(VEGF)が誘導する管腔形成が顕著に抑制されることが明らかになった。HUVECではさらにVEGFが誘導する細胞増殖、細胞移動が抑制された。そこで、VEGFが伝達するシグナル伝達に対する影響を調べたところ、AGS8ノックダウンではVEGF2型受容体(VEGFR2)におけるTyr996, Tyr1059, Tyr1175においてリン酸化いずれもほぼ完全に抑制されており、同様にその下流のp38, ERK1/2のリン酸化も顕著に抑制されていることが判明した。細胞表面のVEGFR2が40%程度に減少していること、VEGFR2の減少はVEGFR2のエンドサイトーシスによるものではないことがFlow Cytometer解析や阻害剤を用いた実験により明らかになった。VEGFR2の細胞内局在を免疫蛍光染色によって解析したところ、明らかVEGFR2は核周辺のゴルジ小胞体の複合体と考えられる部位を中心にして細胞質局在が増加していることが判明した。以上のことからAGS8は細胞質から細胞膜への輸送にかかわっていることが強く示唆された。 一方、血管新生が病態の進展に関わる例として加齢性黄斑変性症が挙げられる。この疾患モデルをマウス脈絡叢へのレーザー照射手術により作成した。脈絡膜で誘導される血管新生部位においてAGS8遺伝子発現が術後に亢進されることが明らかになった。現在解析を進めているとことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ順調に研究目的を達している。
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今後の研究の推進方策 |
AGS8がどのような分子メカニズムでVEGFR2の細胞質細胞膜輸送に関与するのかについて明らかにしたい。分子輸送に機能するRabファミリーやMicrotubeへの関与を仮定して、内皮細胞におけるAGS8の血管新生に対する機能をさらに明らかにする予定である。 また加齢黄斑変性症モデルマウスの解析においては、今後、脈絡叢のどの部位でAGS8の発現が亢進したのかを明らかにするとともに、今後作成するウイルスベクターを用いてAGS8の機能阻害により病的血管新生が抑制されるのか、実際に黄斑変性症が動物モデルで制御されるのかどうかについて検討を進める予定である。
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