研究課題/領域番号 |
25461139
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 杏林大学, 医学部, 教授 (20170764)
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研究分担者 |
蒲生 忍 杏林大学, 保健学部, 教授 (90122308)
吉野 秀朗 杏林大学, 医学部, 教授 (90129734)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | BMPR2 / PAH / IPAH |
研究概要 |
肺動脈性肺高血圧症は生命予後不良の難治性疾患であり、BMPR2 遺伝子の変異が発症に関与するが、 すべてを BMPR2 遺伝子の変異で説明することはできない。しかし、BMPR2 遺伝子に変異が見られ ない場合でも発現量が減少している例が存在する。さらに PAH が女性に偏って発症し変異を持ちなが ら未発症な者は男性が多いなど、Epigenetic な修飾による制御が関与することを強く示唆する。本研 究においては未発症者を含めた患者の末梢血、剖検組織等を試料に、BMPR2 遺伝子の 1) 転写制御領 域のメチル化、2)選択的スプライシング、3)non-coding RNA、特に BMPR2 3’-UTR に結合しその安 定性に関与する miRNA による Epigenetic な発現または機能抑制の可能性を検討する。さらに培養血 管内皮細胞を用いた in vitro の系を確立し、それぞれの分子機構の詳細な解明を目指す。未発症者及び患者の末梢血、剖検肺組織を試料として、BMPR2遺伝子発現へのEpigeneticな制御の可能性を次の3項目について検討し、さらにそれぞれの項目を臍帯動脈や肺動脈等由来が異なる 培養ヒト血管内皮細胞を用いたin vitroの系で、BMPR2遺伝子発現やBMPR2を介する細胞内情報 伝達に与える影響を明らかにする。 1)転写制御・開始領域のメチル化パターンの検討とin vitro methylationによる解析 2)BMPR2遺伝子転写物の網羅的解析による選択的スプライシングと優性阻害効果の検討 3)non-coding RNAによる制御、特にBMPR2 mRNAの3’-UTR に結合するmiRNAの発現解析と miRNAの導入によるBMPR2発現制御のin vitroでの検討
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BMPR2 遺伝子のゲノム配列は 200Kb で 13 エキソン、mRNA は 5’-UTR の 1kb と 3’-UTR の 8kb を含め 12kb に及ぶ。現在、転写開始点近傍と UTR 一部は PCR-DS 法で配列解析を開始すると 共に、BMPR2 遺伝子の総てのエキソンとその近傍を含む約 10kb 毎のゲノム断片を増幅すること に成功し、BMPR2 遺伝子全域を対象とし、今年度本学に導入された Ion PGM シークエンサーを 利用した配列解析を進めている。この基盤の上に、BMPR2 遺伝子の Epigenetic な修飾 による発現制御の可能性について次の三項目 1)転写性御領域のメチル化、2)選択的スプリシング、3)ncRNAによる制御 を遂行することができたためについて検討する。 。
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今後の研究の推進方策 |
平成 26 年度以降は、平成25年度の成果を基盤に、臨床試料を用いた解析に加え、臍帯や肺動脈等由来が異なる培養ヒ ト血管内皮細胞(タカラバイオ HMVEC-L、HPAEC、HUAEC等)を用いたin vitroの系で、 Epigeneticな修飾が発現やBMPR2を介する細胞内情報伝達に与える影響を明らかにする。 1)選択的スプライシング (主として蒲生) BMPレセプター系は type1 とtype 2が各2分子ずつの4量体を形成する。従ってスプライ ス・アイソフォームは優性阻害Dominant Negative効果を生じ、情報伝達の阻害が期待される。これを検証するため、 アイソォームの発現ベクターを作製し、培養ヒト内皮細胞に導入する。アイソフォームが内存性BMPR2による細胞内情報伝達を阻害するかを、情報伝達系 下流のCofilinのリン酸化特異的抗体を用いたウェスタンブロットで評価する。 2)ncRNA による転写後制御(主として佐藤) 1. 臨床試料を用い 3’-UTR に結合する miRNA 遺伝子の変異の可能性を PCR-DS 法で解析する。2. 3’-UTR に結合する miRNA や網羅的解析で発現量の多い miRNA を培養ヒト内皮細胞に導入 し、内存性 BMPR2 遺伝子の発現への影響をリアルタイム PCR、細胞内情報伝達系への影響 を Cofilin リン酸化で検証する。3.さらなる挑戦が可能な場合、クロマチン免疫沈降法を用い臨床試料(ホルマリン固定標本使用可)からクロマチン結合 DNA と長鎖 non-coding RNA を抽出し、BMPR2 とその近傍の遺伝 子、近傍の偽遺伝子由来 ncRNA の存在を定量 PCR により解析し、患者 BMPR2 遺伝子のヘ テロクロマチン化による Epigenetic な不活性化の可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験自体は順調に行っていますが、解析の件数が少なかったため、次年度使用額が生じました。 主に解析に使用する物品費として使用する予定です。
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