研究課題
慢性腎不全 (CKD)患者では、末期腎不全に陥る頻度よりも、心血管疾患で死亡する率が高い。血管石灰化と内皮機能障害はCKD患者における血管障害の特徴だが、メカニズムは不明である。アテローム硬化型の血管石灰化では、血管平滑筋細胞の骨芽様細胞への形質転換の制御機構において、骨形成蛋白質であるBone Morphogenetic Protein (BMP)/Smadシグナリングの関与が報告されている。さらに最近、申請者は内皮細胞においても、CKD患者の血清が、BMP/Smadシグナリングを活性化させることを見出した。本研究では、BMP/Smad経路がCKDの血管石灰化と内皮機能障害の病態生理において、共通した重要な制御メカニズムであることを明らかにし、CKDの二大合併症を同時に予防、治療する方法の開発を目指している。我々は腎不全マウスとして、5/6腎臓摘出マウスを作成している。CKDマウスでは、血圧上昇を伴わずに、中等度腎機能低下がみられることを示している (Kajimoto et al, Kidney Int 2012)。以下の項目を解析した。計画2: 内皮細胞におけるBMP/Smad経路の機能解析計画2-1: ALK3 ノックアウトマウス: BMP受容体の一つであるALK3 ノックアウト (KO)マウスにおけるCKDモデルを作成した。血管石灰化の有無と内皮機能を調べることにより、BMP/Smad経路の関与を証明できた。計画2-2: BMPRIA阻害剤投与による内皮機能の保持: 腎不全マウスを作成し、2週間後からBMP Type I 受容体を特異的に阻害する低分子化合物であるLDN-193189 3mg/kg 1日2回を腹腔投与した。2週間後、大動脈における内皮機能の保持効果があるか解析した。LDN-193189のvivoに対する効果は、肺の組織を用いて確認できた。計画2-3: 培養内皮細胞にリコンビナントタンパクのBMP2を投与し、細胞内eNOSシグナリングの発現、培養液中へのNOxの放出量を評価した。
2: おおむね順調に進展している
予定した実験・解析ができているため。
当初の予定通り、計画3: CKDにおける血管石灰化と内皮機能障害を共に制御するBMP/Smad経路の意義について検討する。
実験予定が複数年度に渡って継続的に行う内容があり、一部の助成金の支出が次年度になった。
試薬等の購入や解析に使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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