研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、吸入製剤である吸入ステロイド配合剤(ICS)、抗コリン製剤の呼吸筋への収縮特性に与える機序を解明することである。ICS/LABA配合剤は気管支喘息、及び抗コリン製剤は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の吸入治療薬だが、これらの吸入剤の横隔膜筋に与える効果については、これまで十分に検討されてないことから本研究を計画し、今年度はICS/LABA配合剤の効果を検討した。研究成果は以下の通りである。(1)ICS/LABA配合剤の吸入による横隔膜筋への効果について、配合剤としてBudesonide/Formoterol(以下BUD/FOR)の配合剤を使用した。その粉体成分はBUD 36μgとFOR 1μgの両方を含有している。エアーポンプを用いて、粉体を経気道的に吸入をさせ、直後、1、2、4時間後の時間設定で収縮特性を測定した。ICS/LABA配合剤の吸入後、1時間後に有意(p<0.05)に張力-周波数曲線を上方に偏移し、その後コントロールレベルに低下した。このことは、ICS/LABA配合剤は横隔膜筋収縮力を増強したことを意味する。(2)ICS、LABA各単独吸入の検討を次に行い、BUD 36μgまたはFOR 1μgをそれぞれ単独吸入した後、直後、1、2、4時間後の時間設定で収縮特性の各パラメーターを測定した。FOR吸入後1、2(各p<0.01)、4(p<0.05)時間後でそれぞれ有意に張力-周波数曲線を上方に偏移させ、筋収縮力の増強が見られたが、一方BUDの筋収縮力増強は有意でなかった。(3)ICS、LABA各incubationの検討を次に行い、BUD及びFORの横隔膜筋への直接作用の有無を検討した。BUD10-13, 10-10(各p<0.05), 10-7 (p<0.01)Mで有意だが濃度依存性はなかった。一方FOR10-13(p<0.05), 10-10 (p<0.01)Mで濃度依存的に有意に増強させた。共に直接作用がみられ、FOR(LABA)はBUD(ICS)よりも横隔膜筋増強作用が大きく、配合剤の増強効果は主にLABAに依存していることが推察された。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、ほぼ計画通りに進行した。
今後は、当初の計画どおりに平成26年度の実験計画に沿って研究を推進する。平成26年度は抗コリン製剤の一つである、Tiotropiumの吸入時の効果を検討する。Tiotropiumは市販されている吸入器(Soft mist)を購入し、動物への吸入は、軽麻酔下に動物は自発呼吸をしているので、喉頭部に噴霧することにより投与する。この吸入器の使用及び経気道投与については、十分練習して習熟しているので、研究の遂行に差し支えることは無い。吸入後、吸入直後(0時間)、1、2、4時間後に横隔膜筋を摘出し、張力-周波数曲線、単一収縮等の収縮特性を測定する。同様に各時間設定でNADPH diaphorase染色を行い、かつiNOS mRNAの発現の検討を行う。抗コリン製剤(Tiotropium)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として市販されている。この吸入剤による横隔膜筋収縮力の増強は、呼吸不全の防御に関係するものと考えられる。
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PLOS ONE
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