研究課題
本研究の目的は、吸入製剤である吸入ステロイド(ICS)と長時間作動性β2刺激薬(LABA)との配合剤、また長時間作動性抗コリン製剤(LAMA)の横隔膜筋への収縮特性に与える機序を解明することである。ICS/LABA配合剤は主に気管支喘息、及びLAMA吸入剤は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の吸入治療薬として臨床で広く使用されているが、今年度はエンドトキシン(LPS)の腹腔内投与(20 mg/kg)を行うと、4時間後には有意に張力-周波数曲線を低下させ収縮力の減少が惹起されるが、これに対してICS/LABA配合剤やLAMA吸入剤を同時に吸入させるとLPSによる収縮力減少を抑えるかどうか検討した。ICS/LABA配合剤は吸入1時間後に横隔膜筋張力を増加させるが、一方エンドトキシン単独投与では4時間後に張力を減少させる。このエンドトキシン筋収縮力低下は、ICS/LABA配合剤の投与でエンドトキシン投与直後より上方にシフトさせ、防御していた。またNO産生についてもエンドトキシンによる増加を阻止していた。また、長時間作動性抗コリン製剤(LAMA)を吸入させた場合は、吸入4時間後に横隔膜筋張力を増加させるが、エンドトキシンの4時間後の筋収縮力低下に対して、防御することが判明した。エンドトキシンは、敗血症として直接的に横隔膜筋張力をも低下させ呼吸筋不全状態を惹起させる。ICS/LABA配合剤と長時間作動性抗コリン製剤(LAMA)の作用機序は異なるが、いずれもエンドトキシンによる呼吸筋収縮力の低下を防御し呼吸筋不全状態を改善する可能性が考えられた。また筋線維でのNO産生を阻止していることから、フリーラジカルの産生(細胞毒性)を阻止することにより、筋収縮力低下を防御したと考えられる。今回の結果は、呼吸筋疲労状態を防御するように働くものと推察され、また両吸入剤によるNO産生の阻止は、抗炎症的に作用することを支持しており、大変興味ある結果であると考えられる。
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