スパイロメトリー検査は、呼吸器診断に必須の検査でありますが、測定手技の難しさと被検者協力の必要性のため、一般医家において普及していないのが、呼吸器診療の問題となっております。本研究の目的は、測定が簡便で、スパイロメトリーの代替となる測定機器の開発であります。開発機器は、安静呼気中に陰圧負荷をかけることで得られる安静呼気フローに着目し、多段階の陰圧負荷による安静呼気フロー変化を測定する機器を開発いたしました。平成25年度より研究は開始されまして、平成25年度において、機器の小型・軽量化および機器稼働の安定性を達成し、平成26年度においては、測定方法の見直し(マウスピースよりフルフェイスマスクへの変更、安静呼吸の安定性確保のため吸気時の圧補助機構を機器仕様に追加)により、測定結果の再現性(陰圧負荷時に出現することがある二峰性波形の低減)を得ることに成功、また、実用化に向けて、機器自体も平成25年度よりさらに3割ほど小型軽量化いたしました。平成27年度は、本大学倫理委員会承認のもと、診断指標の確立のため、患者様を対象としまして測定をしてまいりました。その間、測定にかかる時間が問題となりまして、測定プログラムを変更いたしまして、1回の試技中に負荷陰圧を可変させ、測定が数分で終了させることを可能といたしました。指標として、陰圧負荷曲線面積変化率が、閉塞性換気障害診断精度(ROC-AUC)96.9%であることを明らかとし、スパイロメトリーに代わる検査機器になりうる成果を達成しました。
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